セ・リーグの最下位に転落した中日が来季、「清原和博入閣」という「禁じ手」に打って出る可能性が高まっている。
セ・パ交流戦での成績もパッとせず、ついにリーグ最下位に転落した立浪中日。シーズン前は、待望のミスタードラゴンズの監督復帰で、ファンの期待は大きかった。
だが、ダメ虎にも追い抜かれる体たらくに、早くもストーブリーグに突入の気配が漂っている。
その第1弾と目されているのが、清原氏の打撃コーチ就任である。開幕当初は中村紀洋が1軍打撃コーチを、波留敏夫が2軍打撃コーチを務めていたが、交流戦開幕直前の5月23日、両者を入れ替える配置転換が行われた。
広いバンテリンドームナゴヤの利点を生かし、単打や小技を駆使した、いわゆる「スモールベースボール」を目指す立浪監督に対し、1発にこだわる中村紀洋コーチが指導法を巡って対立したことが原因だと言われている。球団OBは、
「立浪監督は、味方の時は頼りになる人間。ところが、一度関係が悪くなると、修復が難しいタイプ。ある意味、亡くなった星野仙一監督に似ている」
立浪監督は現役時代、NPB史上1位の487二塁打を記録。史上8位となる2480安打を放っており、その打撃理論には自信を持っている。その立浪監督を黙らせるほどの打撃理論、実績を持ち、関係が深い野球人は、PL学園の2年先輩である清原氏しかいない。
これまで刑事事件を起こして球界に復帰した現役選手や球界OBは、ほとんどいない。
記憶に残るのは、91年オフに幼女に対する連続事件を起こして逮捕された、中山裕章氏ぐらいだ。不起訴や起訴猶予にこそなったが大洋(現・DeNA)を解雇。それが選手として復帰したのが、中日だった。
当時、この事件を取材していた記者が振り返る。
「彼を守れるチームは中日しかなかった。他のチームに入団すれば、地元のマスコミが騒ぐ。でも名古屋は中日新聞王国。本人への雑音は大幅にカットできた。それが奏功して野球に専念でき、再び球界で活躍できたと思う」
薬物事件を起こして執行猶予にはなったが、清原氏が古巣の西武、巨人、オリックスで指導者として復帰すれば、観客動員に結びつく。ただ、逆にマスコミの格好の餌食にもなる。球団にとっては、まさに禁じ手の類いだ。
だが、周囲に強権発動できる中日は別。清原氏の来季の入閣が現実味を帯びてくる。
(阿部勝彦)