メジャーデビュー10試合目にして、カブス・今永昇太に初黒星がついた。
日本時間5月30日のブリュワーズ戦、4回2/3を投げて2被弾7失点の大乱調。メジャーで唯一、0点台(0.84)だった防御率は1.86となり、リーグ2位に陥落した。だが、敗因はわかっている。中10日の長すぎる「休養」だ。
両親が教員で「投げる哲学者」「先生」と言われる今永は、DeNA時代の少年野球教室で「下半身と背骨で投げる」と力説している。
確かに今永の武器は、しなやかな背筋、特に肩甲骨周りの筋肉の柔らかさにある。背骨をバネのように使い、全体重を乗せた球で、凡打に打ち取るのだ。
ところが5月30日は、序盤から崩れた。中10日、しばらく投球していないため、背中と肩はガッチガチ。初回に3番イエリッチに右中間に運ばれ、2点を先制された。
肩甲骨周りの筋肉はメジャー選手だけでなく、我々の健康の要でもある。背骨と両腕を支えている重要な筋肉ながら、20代で老化、筋力低下すると言われる。25歳以降、猫背や腰痛、肩こり、顔のたるみに悩まされるようになるのも、社会人になって運動不足に陥るのと同時に、加齢で肩甲骨周りの筋肉が落ち、肩甲骨の動きが悪くなるのが原因だ。
平凡な高校球児だった今永がサイ・ヤング賞を狙える大投手になったのは、福岡県立北筑高校時代に、肩甲骨周りを鍛えた筋肉改造のおかげ。球速を110キロから140キロにまで伸ばし、東都大学リーグの名門、駒沢大学を経て横浜DeNAベイスターズに入団。横浜に肩甲骨の筋力トレーニングに詳しいスポーツドクターがいたことも、今永が持ち併せた強運、縁と言えるだろう。
肩こりや腰痛、猫背に伴う内臓機能低下や顔のたるみに悩んでいる人は「ベイスターズ」と「肩甲骨」の検索ワードで探せば、選手やトレーナー、スポーツドクターらの肩甲骨トレーニング動画やストレッチ動画が出てくるので、試してみてはどうか。仕事の合間に座りながら両腕を回す、後ろで手を組んで背中を伸ばすといった動作を取り入れるだけでも、肩甲骨周りの筋肉をほぐすことはできる。
筋肉が柔らかいと、アスリートも一般人も、ケガをしにくい体になる。今永がメジャーの洗礼を浴びたといっても故障や不調ではなく、原因は明らかなので、あとは今後の登板でのカブス打線の援護を待つばかりだ。
(那須優子/医療ジャーナリスト)