カブス・今永昇太が今季、歴史的快挙を成し遂げるのかもしれないと、話題になり始めている。
今永は現地5月1日のメッツ戦(シティ・フィールド)に先発登板し、7回3安打7奪三振の快投。開幕から無傷の5連勝を飾った。防御率は0.78となり、試合終了時点で勝ち星と防御率の両部門でアメリカン・リーグ、ナショナル・リーグ全30球団でトップに立っている。
このままの勢いなら日本人5人目の新人王はほぼ当確だが、それ以上の栄冠に向かって突き進んでいるというのだ。長年、メジャーリーグの取材に携わるスポーツライターも、興奮を隠さない。
「メジャーの投手で最高峰のタイトルといえば、サイ・ヤング賞。過去、日本人メジャーリーガーで、イチローや大谷翔平はMVPを獲得していますが、サイ・ヤング賞を手にした者はいません。今永がこのタイトルに輝けば、大谷の本塁打王に並ぶ偉業です。地元シカゴでもざわつき始めています」
サイ・ヤング賞は、ナショナル・リーグとアメリカン・リーグのそれぞれから、その年に最も活躍した投手1人ずつが選出される。通算勝利数をはじめ、数々のメジャー記録を保持している故サイ・ヤング氏の栄誉を称えるため、1956年に制定された。この賞があるため、投手はMVPには選出されづらいともいわれている。7回ものノーヒットノーランや、通算奪三振(5174個)のメジャーリーグ最多記録を持つノーラン・ライアン。1973年、383個の三振を奪って1シーズンのメジャー記録を更新したが、それでもサイ・ヤング賞には手が届かなかった。
今永の快投の裏には、昨季DeNAでプレーしたサイ・ヤング賞投手、トレバー・バウアーの存在があると、スポーツ紙遊軍記者は言う。
「今永はよくバウアーから話を聞いていたようです。その影響からか、MLBではバウアー並みに、感情を表に出すような投球シーンが目立ちますね」
ロッキーズ相手にメジャー初勝利を挙げた際、今永は「これを船出にたとえるなら、まだ船からロープを外しただけ」とお得意の哲学的表現をしたが、その船はとてつもない大陸へと向かっているようだ。
(阿部勝彦)