6月のパ・リーグがコワイ。といっても、通算勝率が高いセ・パ交流戦の話ではない。パ・リーグ6球団と共同事業会社パシフィックリーグマーケティング(PLM)が、パ・リーグ公式戦を中南米でも放映するのだ。その配信が6月1日にスタートした。NPB(日本野球機構)関係者が語る。
「アメリカに野球専門のケーブルテレビ局があり、ここを介して週3試合から5試合を、中南米・カリブの約40の国と地域に配信することになったのです」
台湾など一部のアジア地域でも、パ・リーグの試合は配信されている。しかし、それは元日本ハムの陽岱鋼(現・新潟)、王柏融(現台湾・台鋼)など、台湾出身の人気選手がいたから成り立つものだ。NPB球団にも中南米出身の外国人選手は多いが、「わざわざ日本の試合を見るのか?」というのが正直な感想だ。
「いや、それなりの反響はあるはずです。中南米出身のこれからの選手、メジャーリーグとの契約を目指してウインターリーグに参加している選手たちは、NPBの情報を求めています」(前出・NPB関係者)
12球団の渉外担当者は、NPBのオフシーズンに開催される中南米のウインターリーグを視察している。変化球の多い日本球界で長打力を発揮してくれそうな外国人選手を発掘するためだが、近年はとある「傾向」が見られるそうだ。海外野球の現状を知るジャーナリストが言う。
「NPBに興味を持つ選手、NPBで活躍して好条件でメジャーリーグ球団と契約したいと思っている選手が、SNSでNPB各球団の様子をチェックしています」
その一環なのだろう。選手間では情報交換がなされており、「あの球団はシブチンだ」「NPB所属の外国人選手のSNSを見たんだが…」といった状態だ。いざ交渉のテーブルにつくと、いきなり具体的な質問をしてくるそうだ。
ケーブルテレビで実際の試合を流すことで、日本のプロ野球界をより身近に、好意的に感じてもらいたい、との狙いがあるのだが、
「日本球界向きの選手がいても、水面下で獲り合いになってしまうんです。相手がメジャーリーグ球団なら諦めもつきます。でもNPBの球団同士での獲り合いになると、どうしてもマネー戦争になっていく。50万ドルで契約できる選手が80万ドルになったり」(前出・NPB関係者)
悩ましい問題はあるにせよ、パ・リーグの中南米進出が、外国人スラッガーのハズレが続くスパイラルを止めてくれるかもしれない。
(飯山満)