10年総額7億ドル(約1015億円)という超破格契約で、大谷翔平(29)がドジャースに三顧の礼で迎えられたのは当然、二刀流という異次元の活躍を求められてのものである。打者専念から〝本来の姿〟に戻ろうと努力しているさなか、何と「投手断念」が公然とささやかれはじめたのだが‥‥。
大谷は昨年9月、右ひじ靱帯の損傷による手術を受けた。18年10月のトミー・ジョン手術以来、2度目の大手術だった。
だからこそ大谷自身、昨年12月に放送された「NHKスペシャル」で、現状を重く受け止めた偽らざる思いをこう吐露している。
「ピッチャーとしては2度目の手術なので、おそらくもう一度同じ症状になったら配置転換。例えば他の野手、どこのポジションになるかわからないが、そういう風になる」
それでも新球団で打者専念として迎えた今季、大谷は期待に違わぬ活躍を見せている。5月29日(日本時間30日)、5月半ばから続いた45打席ホームランなしを払拭し、14号を日本人最多更新となるメジャー通算アーチ26球場目の記録で飾った。そして昨年も27試合で打率3割9分4厘、15本塁打、29打点と最高の成績を挙げた、得意の6月に入ったのである。
ますますの活躍が期待される中、大谷はピッチング練習のリハビリも着実に続けている。
その一方で遡ること5月12日、「USA Today」のベテラン記者・ボブ・ナイチンゲール氏が「本人と近い関係者2人の話」として〈大谷はドジャースから要請されれば、将来的に投手をあきらめて外野手になることを逆らわない可能性が高い〉と、波紋を広げる〝スクープ〟を飛ばしたのだ。
もちろん、先に大谷が懸念していたように、手術を繰り返した負担は計り知れない。報道からほどない15日には、ドジャース・プライアー投手コーチが「うまくいけばプレーオフまでにマウンドに上がり、打者と対戦してほしい」と、報道に過敏に反応する反論コメントを発している。
MLB関係者が話す。
「投手としてリハビリ中の大谷は現在、すでに120〜130キロのスピードが出ている。手術は昨年9月ですから、回復としては早い方だと思います。そもそもドジャースが巨額の投資をして大谷を獲得したのは、二刀流での活躍が前提です。だからこそ前倒しの二刀流復活を今季のポストシーズンに求めているのでしょうが、登板させた結果は出たとこ勝負でしかない。病み上がりで投げた疲労度はどうか、他の投手の間隔を狂わさずに先発ローテを守れるのか、すべては未知数なのですからね」
打者としては期待通り以上の活躍を続けるスーパースターだが、二刀流としては岐路に立っているようなのである。