試合前のフリーバッティングで、ちょっとした光景が見られた。6月6日の広島VS日本ハム戦(マツダスタジアム)でのことだ。
広島OBで野球解説者の前田智徳氏が、日本ハム・新庄剛志監督を表敬訪問。笑顔で談笑するシーンに、
「もしかして打撃コーチに誘われているのでは…」
と勘繰る向きがあるというのだ。それには理由があった。
新庄監督は2021年に自身のSNSを通して、「孤高の天才」と呼ばれた前田氏の画像を投稿。〈同級生の天才前田さんキャンプに選手を教えに来てくれないかな!? 話してくれるかな!? ギャラ高そう〉とメッセージを送っている。臨時コーチではなく、正式な打撃コーチとして迎えたい気持は十分にあるだろう。
1971年6月生まれの前田氏と、1972年1月生まれの新庄監督は同学年で、同じ九州出身。1989年のドラフト会議で、前田氏は広島4位、新庄監督は5位で阪神に入団している縁があり、今でも親密な交流を続けている。スポーツ紙デスクが語る。
「阪神時代の新庄監督に、当時の打撃コーチだった元広島の山内一弘氏が『参考にしろ』とアドバイスしたのが、前田氏のバッティングでした。ところがその打撃理論を全く理解できず、フォーム改造は裏目に出てしまった。そんなところも前田氏が『孤高の天才』と呼ばれる所以ですが、新庄監督にしてみれば、今こそその卓越した打撃技術を若手に伝えてほしいと考えているのかもしれません」
売り出し中の水谷瞬や、今ひとつ伸び悩んでいる清宮幸太郎を前田氏に預けて、万波中正のようなスラッガーに育てたい、という思惑があるのではないか。
来季は広島ではなく、北海道の「北広島」で、前田氏のユニフォーム姿が見られるといいが。
(ケン高田)