9月の自民党総裁選に向けて、菅義偉前首相が激しく動き出した。6月6日には萩生田光一前政調会長や加藤勝信元官房長官らとの会合に、かねてから目をかけてきた小泉進次郎元環境相を呼んだことで、小泉氏も総裁候補として考えているのではないかと、党内に憶測が広がった。
ほかにも、会合に出席した加藤氏、さらに石破茂元幹事長、上川陽子外相ら菅氏の「選択肢」は広がり、側近ですらこう漏らすのだ。
「誰が本命か、本心はわからない」
ただ、この側近が強調するのは、
「断言できるのは、岸田文雄総裁(首相)の再選は絶対に認めない、ということだ」
なぜそこまで菅氏は岸田首相を嫌うのか。秋田から上京し、議員秘書、市議を経て国会議員になった菅氏に対し、岸田首相は東京で育ち、父親の地盤を引き継ぐなど、恵まれた環境にあった。
もっとも、恵まれた環境というならば、小泉氏や河野太郎デジタル担当相は二世どころか三代、四代続けての政治家一家の出身であり、岸田首相よりも恵まれている。その小泉氏や河野氏を、菅氏は「突破力がある」と可愛がっている。菅氏は同じく典型的な世襲議員だった安倍晋三元首相の下で官房長官を長年務めており、世襲議員を一概に敵視しているわけではないのだが…。先の側近が解説する。
「岸田さんは財務省べったりだ、という印象をかねてから持っていて、それで嫌っているんですよ」
岸田首相は、元財務官僚で従兄弟でもある宮沢洋一氏を、党税調会長に起用している。岸田首相の叔母が宮沢喜一元首相の弟と結婚し、生まれたのが洋一氏である。
岸田首相の義弟は、秀才が集まる財務省でもピカイチと言われた、可部哲生元国税庁長官だ。こうした閨閥を見るに、岸田首相が財務省の増税路線を突き進んでいると、菅氏は判断しているようだ。
岸田首相が再選に向けて、まさかの粘り腰を発揮するのか。それとも菅氏主導でポスト岸田の動きが激化し、岸田政権はレームダック化するのか。6月23日の通常国会会期末が迫る中、両者の激突はどんどんあからさまになっていく…。
(田中絋二/政治ジャーナリスト)