事実上の総理大臣を決める自民党総裁選は「安倍vs石破」の“タイマン勝負”の構図だが、下馬評どおり「安倍1強」は崩れず、すでに“消化試合”の秋風が漂う。そんな中、いまだ支持候補を鮮明にしない小泉進次郎氏を巡り、水面下でのバトルは激化しているようだ。時の総理は、最後のピースまでをも奪い取って叩き潰すつもりなのだという。
「金足農業のひたむきさ、一生懸命頑張っている姿が人の心を動かす。自民党もそうあるべきだ」
8月30日、派閥総会の場で夏の甲子園の話題をさらった秋田の公立高校を引き合いに出し、総裁選への決意を新たにしたのは石破茂元幹事長(61)だ。
しかし、相対する安倍晋三総理(63)の選対関係者はこの発言をあざ笑う。
「確かに金足農業がエース吉田輝星君1人で、秋田県勢としては103年ぶりに決勝戦にコマを進めた大活躍には目をみはるものがあった。それでも、決勝戦では大阪桐蔭の強打の前にノックアウト降板となってしまったわけです。みずからを金足農業に例えた石破氏ですが、さしずめ開戦前から負け戦の白旗宣言をしたようなものだと言えます」
自民党総裁選は国会議員票(405票)と地方の党員票(405票)、計810票の投票で争われるが、すでに国会議員票の7割強を確保したとされる安倍総理は、早くも再選後の組閣人事の布陣を固めているという。政治部デスクが人事を巡る裏攻防を詳述する。
「焦点は、幹事長のポストです。突然、『携帯料金は4割下げられる』と発言した菅義偉官房長官(69)は、次期政権をにらみ“幹事長職アピール”に打って出てきた。これに対し、現職の二階俊博幹事長(79)は、党則を変えて“安倍3選”の流れを作った安倍内閣の功労者です。『ここで外されたのでは、反旗を翻すことも』というポーズで死守する構えですが、安倍総理の思惑は違う。公文書書き換えが問題となった財務相の後処理として、現職の麻生太郎財務相(77)は副総理に専念させて、腹心の甘利明元経産相(69)を復帰させたいんです。他にも、最側近である加藤勝信厚労相(62)を横滑り入閣させ、“お友達”下村博文元文科相(64)の再入閣も検討しています」
総仕上げの組閣では、再び“アベ友内閣”となることが濃厚なのだという。国会担当記者が説明する。
「今回の組閣は、安倍総理の後継者を育てる内閣という意味合いもあります。ですから、次の総理を目指せる、相応の人物を配置したい。その有力候補となっているのが、昨年外相に就任して1年で40カ国以上を歴訪し、実績を上げている河野太郎外相(55)です。所属する麻生派の長からじきじきに『このままいけば次はお前だ。今回の総裁選には口を出すな』と命じられ、選挙期間中はほとんど不在となります」
さらには、総務相に小渕優子元経産相(44)の再入閣、五輪担当相に橋本聖子参院議員(53)や丸川珠代参院議員(47)などの名前も挙がっているという。
要は、総裁選の結果などハナからわかりきっているから、その先のシナリオが肝心というわけだ。
「しかし、本当の眼目はもっと別のところにある。ズバリ、石破潰しです。石破氏は『正直 公正 石破』というスローガンを掲げて出馬宣言しましたが、あれではまるで安倍総理がウソつきだと言っているようなもの。自民党内、特に安倍シンパは『石破は総裁選を泥試合とはきちがえている』と怒り心頭です。いまだに『もりかけ』を選挙戦の争点にしようとしている野党並みの戦術だとイラだち、安倍総理サイドは圧倒的な得票差をつけて完全勝利することに躍起となっている。選挙に負けた石破氏が無役になるのは当然のことながら、さらには石破派の議員を分断したうえで、党内からあぶり出す構えです」(政治部デスク)
“仁義なき総裁選”で劣勢の石破氏は完膚なきまでに叩き潰されてしまうのか。