6月12日に行われた「宝塚記念」の1週前追い切りで、「調教だけでお金を取れる馬だね」と、騎乗する武豊を破顔させた、最有力馬ドウデュース。
確かに、この日のラスト2ハロン10 秒9-10秒8は破格の時計で、追い切りを視察した松島正昭オーナーが「すごかったな」とうなるのは当然だった。まさに、絶好調の仕上がりだ。
そうなると、13頭が出走予定の今年の春のグランプリは「ドウデュース1強」で揺るぎないのか。だが、関西の馬券師ライターは「ドウデュースが勝てる保証はない」と、表情を引き締める。
「出走馬の中で唯一のGⅠ2勝馬。しかも、日本ダービーと有馬記念というビッグタイトル2つです。イクイノックスがいない今、ドウデュースが圧倒的1番人気で間違いないでしょう。ただし、ドウデュースには今回に限って、重大な穴があります」
馬券師の目線からは、実績も状態もナンバーワンのドウデュースに死角があるというのだ。それは何なのか。
「なぜかまったく語られませんが、今年の宝塚記念の場所は阪神ではありません。改修工事時が終わって、昨年から使用が再開された京都競馬場で行われます。阪神との違いは直線平坦、バックストレッチからの下りで加速し、とんでもない速い上がりを要求されるコースです。ところが、ドウデュースは5歳にして、京都競馬場では初出走です。これは盲点です。勝っているのはすべて直線に坂のあるコース、スピードよりスタミナがものをいうコースでした。京都は先に抜け出してスピードで押し切る馬か、とんでもない切れ味で差してくる馬が有利。徐々に追い上げて競り勝つドウデュースの脚質にぴったりとは言えません」(前出・馬券師ライター)
事実、過去に阪神競馬場の改修などで京都競馬場で行われた宝塚記念は7回あるが、京都コース未出走馬が買った例はない。
最近でいえば、第47回(2006年)のディープインパクトは2歳時に京都でレコードタイム勝ちを記録している。第36回(1995年)のダンツシアトルは、京都で5戦4勝という猛者だった。また、第32回(1991年)のメジロライアンは、前年に同じ京都2200㍍の京都新聞杯をレコード勝ちしている。
「コースの得手不得手を侮るなかれです。鞍上は宝塚4勝の武豊騎手ですし、ドウデュースが初出走でこなしてしまう可能性はゼロではないです。しかし、断トツの人気になればなるほど、足元をすくわれる可能性の方が高いとみるべき。馬券師なら当然です」(前出・馬券師ライター)
確かに、ドウデュースは完全無欠の馬ではない。人気を裏切り凡走したケースが過去には数回ある。人馬ともに人気があるだけに、開催週はさらに1強ムードが煽られるはずだ。だからといって、迷わず1着固定で飛びつくには「危険な人気馬」の匂いがプンプン漂っていることをお伝えしておく。
(宮村仁)