えちごトキめき鉄道の鳥塚亮社長が、大井川鐵道(静岡県)の社長に就任することが内定したと、大井川鐵道が発表した。6月28日の株主総会で承認され、取締役会で正式に決定する。このニュースを聞いた鉄道ファンは、一様に驚いたに違いない。
鳥塚氏は2009年に千葉県のいすみ鉄道の社長に就任して経営を立て直すと、2019年にはえちごトキめき鉄道の社長に就き、集客に成功。「再生請負人」と呼ばれた。同時に生粋の鉄道好きでもあるが、鉄道ライターは鳥塚氏をこう評する。
「大手航空会社で働きながら、副業で列車の前面展望映像を販売する会社を作りました。鉄道好きとあって、会社の再建は愛あるものでした。再建といえば、無駄を排する消極的な策が多いものですが、鳥塚氏は国鉄の古い車両を導入して観光客を呼び込む積極策を採用した。いすみ鉄道では国鉄キハ52形とキハ28形を導入し、えちごトキめき鉄道では国鉄413形・455形を国鉄急行色にして運行させました。どちらも鉄道ファンを大いに喜ばせましたね」
それだけに大井川鐵道でも、鉄道好きを喜ばせる経営を展開してくれそうで、これまで以上に期待が膨らむと、先の鉄道ライターは言うのだ。
「いすみ鉄道とえちごトキめき鉄道は古い車両を持っていなかったので、外部から取得しましたが、大井川鐵道はすでに多くの古い車両を持っています。蒸気機関車は休車中のものを含めれば5両あり、そのうちひとつはお召し列車を牽引したことがあります。さらに静態保存されていた2両を復活させる予定で、日本一の蒸気機関車王国となる。電気機関車は3両で、西武鉄道が使っていたE31型電気機関車は鉄道ファンの人気が高い。客車は旧型客車に加えて、12系と14系も持っています。電車は南海21000系電車が現役。これらを使って鳥塚氏がどんな列車を運行するのか、楽しみでしかたがありません」
社長就任内定発表の前日、鳥塚氏は自身のブログに、大井川鐵道が所有する「国鉄C10形蒸気機関車8号機」(写真)の思い出を記した。そんな思い入れのある蒸気機関車をどう使うのか、日本中の鉄道ファンが注視している。
(海野久泰)