自分の住む最寄りの警察署に登録すると、地域の犯罪・防犯情報をタイムリーに提供してくれる警視庁の「メールけいしちょう」というサービスが好評だという。東京がそれだけ犯罪件数が多いことの証左でもあるが、実は警視庁のホームページでは、「変質者」の出没情報が各行政区分別に閲覧できる。それをつぶさに見ていくと「アブない地域」をランキング化できるのだ。その意外な順位は‥‥。
警視庁のホームページ内の「警視庁管内不審者情報」は〈特別区〉と〈多摩地域・島部〉とに大別され、それぞれ〈千代田区〉〈中央区〉〈港区〉‥‥、〈八王子市〉〈立川市〉〈武蔵野市〉‥‥といったように同庁の各管轄を示す地名をクリックできるようになっている。そこで、例えば世田谷区を見ると、昨年12月2日の情報として、こうある。
〈成城警察署
12月1日(月)午前6時52分ころ、世田谷区成城4丁目の公園内で、児童が登校途中、男に写真を撮られました。
声かけ等の内容
・スカートの中にスマホを差し入れられたもの
不審者の特徴:30から35歳くらい、髪茶髪、体格ぽっちゃり、灰色ニット帽、黒色ダウンコート、チャコールグレーズボン、黒色〉
また足立区を見ると、11月10日(月)に寄せられた情報はこんな記述だ。
〈綾瀬警察署
11月9日(日)、午後1時30分ころ、足立区綾瀬7丁目の公園内で、児童が遊んでいたところ、男に声をかけられました。
声かけ等の内容
・うちに来ない?
不審者の特徴:60歳代、170cm位、やせ型、茶色っぽいYシャツ、黒色っぽいズボン、帽子、自転車利用、白色っぽい軽快車(通称ママチャリ)〉
淡々と記述されているがそれが何とも生々しい。さらに昨年の9~12月における管内で発生した、主に男女の児童の通報によるものと思われる「不審者情報」をチェック。現在公表されている情報を管内ごとに見てみると、多い順に世田谷、足立、練馬、江戸川、葛飾、板橋、文京、北の各区、そして八王子市の順だった。
それにしても意外なのは、高級住宅地のイメージが強い世田谷が1位であることだ。もちろん人口が23区中でいちばん多い(約88万人、2位は練馬区の約72万人)のだが、ジャーナリストの窪田順生氏が言う。
「不審者情報が寄せられる件数が多いのは都心部を除きドーナツ状に広がっている。いわば東京と接する埼玉、千葉、神奈川県などとの境界線上にあるわけです。これは県と都の境では、犯人が警視庁管轄外にすぐ逃げ込めることを意味しています。これまでも幼女をさらうような変質者は県境に住んでいたことが多かった事実がある。また、世田谷区で言えば、かつての暴走族『関東連合』メンバーも世田谷区出身者が多い。世田谷が治安がいいというのは作られた虚像ではないですかね」
元兵庫県警刑事の飛松五男氏も、世田谷、杉並はイメージほどは治安はよくない、とこう話す。
「治安がいい、防犯意識が高いというのは家を売るために作られたイメージだと思いますよ。首都圏でも住みたい場所として人気の高い武蔵野市の吉祥寺駅近辺は事件が多く、2年前にも若い女性が通り魔に襲われ殺害された。私も取材で訪れたが、治安の悪さを感じましたよ。住みやすいというのは幻想です」
飛松氏によると「治安が悪い」地区というのは、住民の防犯意識が薄く、警察力が弱いという傾向がある。そこを変質者が狙ってくる。特に幼い子供や年頃の娘を持つ親は、自分の子は自分で守るぐらいの意識を忘れないようにしたいものだ。