「青春18きっぷ」の夏季用(利用期間7月20日から9月10日)の販売が、JRグループからやっと発表された。例年であれば2月前後に発表されるが、今年は販売開始まで1カ月を切ってもはっきりせず、販売中止になるのではないかと心配されていた。
利用期間や発売額はこれまでと同じ。どうやら冬季用も発売されそうだ。しかし、それでも今後の販売中止を心配する声は続いている。その理由は「青春18きっぷ」の歴史にあると、鉄道ライターは指摘する。
「これは国鉄が1982年に『青春18のびのびきっぷ』として、販売を開始しました。国鉄の普通列車が乗り放題になるものです。これが問題になったのは、国鉄の分割民営化の時。JR各社に分かれ、社名に同じJRとついても、全く別の会社になります。どこが販売するのか、売り上げをどう分配するのかが俎上に載りました。結局、JR各社が1年ずつ幹事社になることで決着したのですが、売り上げについてはいっさい明らかにさせていません。これは噂レベルの話ですが、売り上げは分配され、その割合も決まっていると言われています」
その割合は、JR北海道とJR四国に有利であるとされており、
「分割民営化後、乗客が少なく経営が厳しくなることが予想されるJR北海道とJR四国のために、分割民営化を推進した自民党が決めた、とも。そのため、東日本と東海、西日本は『青春18きっぷ』の販売をやめたいのではないか、と鉄道好きは考えているんです」(前出・鉄道ライター)
それを証明するかのように、JR東日本とJR西日本は「青春18きっぷ」と同時期に利用できる、独自のフリーきっぷを販売する。
JR東日本はJR北海道と共に「北海道&東日本パス」を販売。これは7月1日から9月30日のうちの連続する7日間、JR東日本とJR北海道、青い森鉄道などの路線の普通列車が乗り放題になる、フリーきっぷだ。料金は1万1330円である。
JR西日本が販売するのは「WESTERポイント全線フリーきっぷ」。7月20日から9月13日の3日間、JR西日本の列車が乗り放題になる。「青春18きっぷ」と違うのは、JR西日本の新幹線と特急列車の指定席も乗り放題になること。料金はJR西日本がのポイントサービス「WESTERポイント」で、9000ポイントだ。
「JR東海は同様のフリーきっぷを販売していないではないか、と指摘する人がいます。説明しますと、JR東海は東海道新幹線に注力しており、在来線には力を入れていないので、フリーきっぷを販売することはないでしょう」(前出・鉄道ライター)
夏季用は発売されたが、「青春18きっぷ」を取り巻く状況は決して楽観できるものではない。冬季用は発売される…はずだが、来年はどうなるのか。鉄道ファンの心配は続く。
(海野久泰)