日本人には馴染みの深い日本茶(緑茶)に含まれる成分といえば「カテキン(エピガロカテキンガレート)」だ。
あの世界的なコロナ禍が終焉を迎え、落ち着いたかに見えるが、今再びコロナウイルスに感染する人が増えている。これによりカテキンが俄然、クローズアップされているという。どういうことか。
インフルエンザやコロナなど、ウイルスの体内感染は、ウイルス表面の突起物(スパイク)が細胞に吸着、そこから細胞内に侵入して増殖することで起こる。
「これに対してカテキンは、ウイルスに直接作用して感染を阻害することが判明しています」
こう語るのは、健康ジャーナリストである。
「具体的には、ウイルス表面のスパイクにカテキンが取り付いて突起を埋める、もしくはスパイクを包み込んでしまう。こうして細胞へのウイルス感染を防ぎます。たとえウイルスが細胞内に侵入したとしても、カテキンも同時に細胞内に取り込まれるため同様の作用を発揮し、感染後の重症化防止に役立ちます」
ウイルスのスパイクの先には細胞に取りつくジョイント部分があり、スパイクにはウイルスによってそれぞれ固有のマークがついているという。健康ジャーナリストが続ける。
「一般的に、ワクチンによる予防は体の中にウイルスの抗体を作り、その抗体がスパイクのマークを捉えて細胞に取りつくのを防ぐものです。そのため、例えばインフルエンザではマークの種類が違うインフルエンザウイルスが複数あるため、ワクチンで作られた抗体とマークの合わないインフルエンザウイルスの感染を防ぐことができません。一方、カテキンのウイルス感染予防については、ジョイント部分をふさぐものであるため、ウイルスのマークの違いによらず、力を発揮することができます」
日本におけるカテキン研究の第一人者で、40年以上も前からカテキン研究に従事し、世界で初めて緑茶葉からカテキンの分離・抽出に成功したのが、佐賀県にあるウサイエン製薬第13代目当主の野中源一郎氏。ウサイエン製薬は現在も「家康の秘薬」として知られる漢方処方「烏犀圓」を製造する伝統的な製薬メーカーだ。ウサイエン製薬の蔵には古い医学書が多く残されるが、そのひとつに杉田玄白の「解体新書」の原本があることで知られる。
カテキンとコロナ撃退の関係について、奈良県立医科大学は、新型コロナウイルスが市販のお茶によって無害化する効果を確認した、と発表している。基礎研究段階であり、ヒトでの効果は未確認だが、試験管内でウイルスが1分間お茶に触れることで、最大99%が感染力を失ったという。
同大学によれば、カテキンはインフルエンザウイルスなどの表面にある突起状のタンパク質に付着し、感染力をなくすことが確認されており、新型コロナでも同様の効果が推測されるのだと。
感染対策のひとつとして期待されるが、カテキンを含む商品によって効果には差があるため、メーカーの許可を得て商品名の公表を検討する、としている。例えば健康食品の類なら、カテキン含有量が多い、あるいは濃度が高い純粋カテキン商品がよりいい、ということか。
ちなみに2020年7月には、自民党が「茶カテキン研究会」を発足させているが、
「カテキンは抗ウイルス作用のみならず、抗菌作用、抗酸化作用、抗コレステロールなど、健康に寄与する力は抜群。事実、静岡県の天竜川沿いや大井川沿いの緑茶の産地である川根町は緑茶をよく飲む地域であり、ガン罹患率が全国の5分の1と低いことが、静岡県立医科大学の研究で証明されています」(前出・健康ジャーナリスト)
日ごろ、何気なく緑茶を飲むだけでそんなメリットがあるなら、カテキン万歳である。