本来、記者会見というのは質問する記者側と、それに答える相手側との真剣勝負の場だ。特に謝罪会見の場合、そこで放った言葉が幾度となくテレビ番組で繰り返し放送されるため、うまく会見を乗り切れば、答える側の勝利。本音を引き出せれば、質問する記者側の勝ちとなる。
だからこそ質問する側は、相手のしぐさや、ちょっとした表情の変化を見逃さず、言葉のニュアンスにも注意を配らなければならない。
ところがいつの頃からか、記者会見はバラエティー化。特に芸能案件では、相手に印象的なフレーズを言わせようと、場違いともいえる余計な質問をする者が増えてきた。
その典型が「雨上がり決死隊」宮迫博之と「ロンドンブーツ1号2号」田村亮の闇営業問題をめぐる、2019年7月20日の緊急記者会見だった。
嗚咽を漏らしながら詫びる宮迫に対し、終盤になってこんな質問が飛び出すことになった。
「不倫報道があった時に『オフホワイトです』とのお答えをしてらっしゃいましたが、今のお気持ちを色で表すことは可能ですか」
2017年8月の不倫発覚を引き合いに出し、そう聞いたのは「アッコにおまかせ!」(TBS系)スタッフだ。戸惑いの表情を浮かべた宮迫は、
「今日は謝罪のために来ているので…。ちょっと話が違いますので、すみません」
当然ながらこの場面がオンエアされ、拡散したからタイヘンだ。SMS上では〈いくらなんでもふざけ過ぎだろ〉〈あんな質問するなんで呆れる〉〈見ていて気分が悪くなった〉等々、批判で溢れることに。番組のオンエアが翌21日というタイミングもあって、MCの和田アキ子は番組内で声を震わせて激怒した。
「私もびっくりしちゃった。(2人は)真剣にもう謝っていたと思う。本当に。それなのに『今回は何色でしょう?』。ふざけんな、と。『アッコにおまかせ!』34年やってますけどね…スタッフがそんなことを聞きますか。でも『アッコにおまかせ!』って言っちゃった(質問で名乗った)んですから。申し訳ございません。なんとあの2人を傷つけたか。心が痛い。不快感を覚えられた方、申し訳ございませんでした。厳重注意します」
憤るとともに、平身低頭で謝罪することになったのである。
質問した番組スタッフは、芸人ならではの面白い答えを期待したのだろうが、時と場所を選ぶべきだった。質問する側もされる側も、記者会見の向こうには、それを見ている視聴者がいるということを、忘れてはならないのである。
(山川敦司)
1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。