今週7月7日、小倉競馬場ではプロキオンS(GⅢ、ダート1700メートル)が行われる。4戦4勝のヤマニンウルスが武豊を背に出走予定で、断然人気となりそうだ。ただ、初の重賞だけに、試金石の一戦であることは確か。ハッキリ言うと、危険な人気馬なのだ。その理由を順に説明していこう。
まず言えるのは、体質面の弱さである。一昨年8月にデビューしてから、およそ2年間で4戦しかしていない。580キロを超える巨体ゆえ、脚元にかかる負担はかなり大きく、陣営は慎重にならざるをえないようだ。
その証拠に、今年初戦の雅Sを勝った後は、5月18日の平安S(GⅢ)を使う予定だったが、裂蹄のため回避している。
その後は順調なようだが、調教は全て坂路で行っており、負荷のかかるコースでは追い切っていない。陣営によると「この血統はコースで追うと、ガタッとくるところがある」のだとか。
次の理由は、クラスが上がるごとに2着馬との着差が縮まっていることだ。新馬戦4秒3差⇒3歳1勝クラス1秒差⇒3歳以上2勝クラス0秒6差⇒雅S(3勝クラス)0秒2差と、明らかである。
そして3つ目。これまでタフな流れ、揉まれる競馬をしてきていないことが挙げられる。4戦全てで番手から先頭に立って押し切ってきたが、それができたのは、メンバーのレベルが低かったことにある。今回は強力な先行馬や捲りを持ち味とする馬がいるため、楽な競馬は望めそうにない。さらにこの舞台での持ち時計は8番目であり、トップのスレイマンの1分42秒2からは2秒1も遅いのだ。
以上のことから、評価は下げたい。平安Sで2着したハピや、この舞台を得意としているスレイマンなどを上位に見るべきだろう。
さて、もうひとつ見逃せないのは、同日の5R新馬戦・芝1800メートル。7頭立てで馬券的な妙味はないが、素質馬揃いだ。1番人気はセレクトセールで3億4100万円で落札された、川田将雅騎乗のダノンシーマ(牡、栗東・中内田厩舎)だろうが、馬体は細身で、完成するのはもう少しあとのように思える。これで勝てるなら、来春が楽しみだが。
クローズアップしたいのは、キズナ産駒のバズアップビート(牡、栗東・友道厩舎)だ。中間は栗東CWで目を見張るような動きを見せており、仕上がりの良さが目立つ。騎乗した坂井瑠星騎手も「ここまでは申し分ないですね」と、満足げだ。大いに期待したい。
(兜志郎/競馬ライター)