まるで敗者の記者会見のようだった。
パリ五輪で金メダルを狙う、サッカーU-23日本代表メンバー18名が発表された。焦点は、交渉困難と言われたオーバーエイジ(OA)枠の選手が何人選ばれるのか、だった。
ところがフタを開けてみれば、OA枠の選手はゼロ。それどころか、チームの中心として活躍してきた松木玖生まで、メンバーから外れていた。
当然ながら、質問はOA枠ゼロと松木の落選の理由に集中した。それでも大岩剛監督は「いろいろな制限がある中…」と前置きして、
「今、招集できるベストメンバーを招集した」
松木の落選については、
「選ばれた選手の話をさせていただきたい。コンディションの問題ではありません」
と話すにとどめた。
最終的には、山本昌邦ナショナルチームダイレクターが答えた。OA枠については所属クラブの了承を得られなかったこと、移籍の可能性がある選手もおり、移籍先のクラブが決まらないと交渉ができないことなどが、大きな壁になったようだ。松木についても、
「(欧州への)移籍の可能性があります」
パリ五輪出場を決めてから、五輪世代の久保建英の招集とOA枠3人が誰になるのか、この4人が加わったらどんなチームになるのか、というワクワク感があった。しかし今回は、五輪世代の23歳以下の選手だけで挑むことになった。
本来なら、本大会出場メンバー発表は「この選手たちでメダルを目指す」という意気込みと盛り上がりがあるものだ。ところが大岩監督の顔には、ベストメンバーを招集できなかった悔しさが滲み出ていた。
では、このメンバーの中で注目すべき選手は誰か。もちろん、キャプテンに選ばれるであろう藤田譲瑠チマはその筆頭だ。すでに「A代表に招集すべき」という声が出ている。
彼以上に見てほしいのが、斉藤光毅。アジア最終予選には所属クラブの了承が得られず招集されなかったが、6月のアメリカとの強化試合では、何度も左サイドを切り裂き、違いを見せた。
本大会での大岩ジャパンのサッカーは、大きく変わらないと思う。中盤のミドルゾーンでアグレッシブにボールを奪いにいって、そこから速く攻める。攻撃的な守備が基本だ。だから攻撃面でも、ボールを奪われた時の守備の切り替えが速い。カギを握るのは、斉藤や平河悠がいる左サイドからの攻撃。左から崩して中で勝負、先制して逃げ切るパターンに持っていければ最高だ。
全員23歳以下のメンバーとはいえ、一緒にプレーしている時間が長く、コンビネーションもコミュニケーションも問題ない。苦しみながらもアジア予選を突破したことで、チームはひとつにまとまっている。それが大岩ジャパンの大きな武器になるはずだ。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップ・アジア予選、アジアカップなど、数多くの大会を取材してきた。