力の差は歴然だった。大学生10人を含む22歳以下のメンバーでアジア大会に参加した日本は、決勝で韓国に1-2と逆転負けを喫し銀メダルに終わった。
点差だけを見れば接戦で惜敗と言えるかもしれないが、試合内容を見れば点差以上のレベルの差があった。日本が開始早々に先制点を挙げていなければ0-3、0-4の大差になっていたかもしれない。
現に、開始2分で日本が先制したものの、その後は完全な韓国ペース。日本はヘディングの競り合いで負け、中盤でのボールを奪い合いにも負け、韓国のプレスにミスを繰り返す。前半27分に同点にされる。後半に入ると日本がやや盛り返すが11分に逆転を許す。
その後、日本は攻撃的な選手を交代で投入するも、チャンスを作るどころかシュートらしいシュートも打てず試合は終わった。
確かに韓国はU-24代表にオーバーエイジ3人を加え、A代表経験者も多く本気モードのチーム。日本と比べれば明らかに格上だった。
そんな中、この大会で気になった選手がいる。1人は佐藤恵允。今夏、明大からドイツのブレーメンに移籍。BチームにあたるU-23のチームでプレーしている。すでにパリ五輪を目指すU-22代表として昨年のU-23アジア選手権のメンバーに選ばれており、大岩剛監督にとっても期待している選手の1人。スピードとパワーを兼ね備え、運動量もあり守備も怠らない。日本の先制点は、この佐藤のサイドを切り裂くドリブルが起点となった。韓国相手にも当たり負けない強さと最後まで諦めないプレーは、パリ五輪アジア最終予選でも貴重な戦力になるはずだ。
もう一人はチーム最多の4得点を決めた内野航太郎(筑波大学1年)。当初はメンバーに入っていなかったが、熊田直紀(FC東京)のケガで追加招集された選手。得点感覚は高校時代から定評があった。186㎝の高さだけでなく柔軟性もあり、韓国戦の先制ゴールはペナルティ・エリア内でありながらも冷静に決めている。
今大会の目標は金メダル獲得だった。その目標は達成できなかったが、パリ五輪アジア予選に向けての底上げはできたのではないか。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップアジア予選、アジアカップなど数多くの大会を取材してきた。