むしろ、阪神ファンの方が大喜びか。
現在、セ・リーグ5位で貧打と借金にあえぐ中日が地元バンテリンドームで、7月5日から7日の首位・広島との3連戦に、まさかの3連勝。順位は5位のままながら、広島とのゲーム差を一気に3.5差に縮め、混セの演出に一役買った。
その立役者は、板山祐太郎。昨年オフに阪神から戦力外通告を受け、中日に育成選手として入団した選手だ。
この3連戦、カープ打線は中日投手陣に計11安打に抑えられた。それが、3連戦すべて2点ずつしか取れなかった中日が3連勝できた最大の理由だが、野手陣でひとり気を吐いたのが板山だった。6日には相手のエース・大瀬良大地から移籍後初アーチを放つと、7日は同点で迎えた9回裏、一死満塁の場面で守護神・栗林良吏からライトへサヨナラ安打を放った。2日連続でお立ち台という快挙だ。
そんな板山が、ヒーローインタビューでもファンを沸かせてくれたと、野球記者が話す。
「開口一番、『やりましたー!』と喜びを爆発させて歓声を浴びた板山ですが、サヨナラ安打を祝福するチームメイトからのウォーターシャワーについて『誰かがアクエリアス掛けたので、ちょっとベタベタしてます』と明かして、ファンを爆笑させていましたね」
普段はミネラルウォーターを浴びせるのが通例だが、VTRでスロー映像を確認すると、「犯人」は岡林勇希だったことが判明。これがイタズラなのか、ただの間違いなのかは不明だが、どちらにせよファンは大喜び。そして、板山に対して「名古屋に来てくれてありがとう」の言葉が大量にあふれただけでなく、首位の広島をやっつけた元虎戦士に、阪神ファンからも「よくやった」「おめでとう」の声が飛び交っていた。
実はこの板山、6月25日の阪神戦(倉敷)では、3安打猛打賞でヒーローインタビューをすでに受けている。その時の「忘れられない1日になりました」という言葉を聞いて、阪神2軍の鳴尾浜時代からの板山の頑張りを見てきた野球評論家の福本豊氏は、「泣いた」と話している。
もはや、中日にはなくてはならない存在。大混戦のセ・リーグで、板山の勝負強さによって、阪神が今回の広島と同じ目にあわされる日が来ないとは限らない。
7月12日からはバンテリンドームで3連戦が控えているだけに、元虎戦士の活躍を喜ぶのはここまで。岡田阪神はきっちりと対策を立てなければいけないはずだ。
(石見剣)