全国で「手足口病」が爆発的に感染拡大している。
東京都は6月20日に「手足口病」の報告数が警報発令レベルに達したと発表。春先から流行の続くRSウイルスと合わせて、注意を呼びかけていた。警報レベルまでは達していない東北と山陰でも、患者報告数は過去最高レベルで、新型コロナ流行前以来となる、5年ぶりの感染爆発となった。
「手足口病」は小児麻痺を引き起こすポリオウイルスと同種の「エンテロウイルス」が原因の感染症で、初夏から秋にかけて流行する。その名の通り、手足と口に水ぶくれができ、口の中にできると痛みのあまり食事や水分を摂れなくなり、子供が脱水症状を起こしやすくなる。
一方で高熱が出ることは少なく、赤みをともなった水ぶくれが数個できるだけの軽症で済むことも多い。そのため、手足口病と診断されたことを黙ったまま保育園や幼稚園、小学校に登園、登校させる親がいるのだが、そうした非常識な行動が、感染拡大とさらなる悲劇を招く。
というのも、前述の通り、手足口病は神経障害を引き起こすポリオウイルスの仲間で、熱性けいれん、無菌性髄膜炎、脳幹脳炎、脊髄前核細胞炎、ギラン・バレー症候群などの神経症状を呈することがあるからだ。
感染させた本人は軽症で済んでも、保育園や幼稚園、小学校で感染させられた子供に脳炎や熱性けいれんからくる意識障害、食事や水が飲み込めなくなる嚥下障害、手足の違和感といった悲劇的な後遺症が残ることがある。
感染した子供を登園登校させてウイルスを拡散した親と、昨日まで元気だった子供が重い障害を抱えることになった親や他の父母との間で、トラブルに発展した例もある。ちなみに手足口病は、感染症法では新型コロナと同じ5類だ。
手足口病と診断されたら、口の中に水ぶくれがあっても飲み込みやすいゼリー飲料やアイスクリーム、プリン、氷を口に含ませるなどして、こまめに水分と栄養補給を。
インフルエンザキットのような簡易検査キットがあるわけではないので、手足口病の診断がつかないこともある。もし発熱後に赤ん坊の不機嫌が続いたり、排尿の回数減少、嘔吐や意識レベルの低下、手足の動きが鈍くなったと思ったら、すぐに医療機関を受診してほしい。
(那須優子/医療ジャーナリスト)