7月14日に初日を迎えた大相撲名古屋場所だが、場所前に相撲記者がこう語っていた。
「今場所の見どころは、何と言っても大の里。夏場所で幕下付け出しから史上最速の所要7場所で優勝を果たした大の里は、今場所の成績と内容次第では場所後に大関に昇進する可能性がある。歴史に残る場所になる可能性があるだけに注目したい」
そんな土俵上は大の里に目線が一極集中する中、実は初日のテレビ中継でファンをいきなり喜ばせた人物がいる。解説者の元横綱・北の富士勝昭氏だ。
中入り後、幕内の取組前半が終わった時のことだ。着物姿でVTR出演した北の富士氏は「こんにちは、北の富士です」と笑顔で第一声を発した。続けて「去年の3月から、長い間休んでしまいましたが、皆様お久しぶりです」と、元気な声で語ったのだ。前出の相撲記者はホッと安堵のため息だ。
「北の富士氏は舞の海秀平氏とともに、毎場所初日や千秋楽に解説を務めることが恒例で、その語り口にはファンが多かった。解説をお休みするようになった昨年3月以降は、視聴者から落胆の声が常に多く寄せられていただけに、久々の登場に一気にテンションが上がったという相撲ファンが少なくありませんでした」
今場所の展望について、北の富士氏は「照ノ富士が出場しますが、結果を残してもらいたい」と話し、大関については「琴櫻と豊昇龍が元気ですね。カド番の貴景勝、何とか頑張ってほしいものです」とエールを送った。そして「特に期待しているのは、先場所優勝した大の里。今場所、どんな相撲を見せるのか楽しみです」と続け、初日の取組の割りを見ながら「三役以上はいい取組が多いね。照ノ富士と平戸海はいい相撲取るんじゃないか」と期待を口にしていた。
「それでは皆さん、一緒に楽しみましょう」と締めた北の富士氏だったが、今場所は解説席に座ることはなく、東京都内で観戦することになるという。
ところが初日、北の富士氏が期待を口にした大の里、さらに3大関がそろって敗れるという波乱の展開にファンはガッカリ、解説陣からは怒りの声が上がった。
舞の海氏は「おそらく、北の富士さんはテレビの前で怒ってますよ。大関陣、何やってんだと」とコメント。横綱・照ノ富士は最後はなんとか勝ち名乗りを受けたものの、平戸海にかなり粘られる展開だった…。
2日目、照ノ富士と大関3人はそろって白星をあげたが、なんと大の里は連敗という最悪のスタートとなっている。
まさか、名古屋場所でファンを一番喜ばせたのが、初日の北の富士VTR出演だった…なんてことにならなければいいのだが。
(石見剣)