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相撲史に残るアイコンタクト!横綱・照ノ富士の全勝街道を支える「名勝負」にファンが涙

 やはりポイントとなるのは、あの一番だった。

 愛知県名古屋市のドルフィンズアリーナで開催中の大相撲名古屋場所は、9日目が終了した時点で、横綱・照ノ富士がただ一人、全勝街道。すでに1敗力士がいない中、優勝に向かってばく進中だ。

 そんな中、ファンの間では全勝優勝を願う声が上がっている。なぜなら、このまま照ノ富士が全勝優勝を成し遂げたとしたら、語り草になるであろう一番がファンの心に大きく刻まれたからだ。

 それは、7日目(7月20日)の結びの一番、照ノ富士がそれまで3勝3敗だった前頭4枚目・宇良と繰り広げた熱戦だ。

 身長17センチ差、体重が34キロ差の両者の取組は、宇良がスピードでどこまで横綱をあわてさせられるかが唯一の注目点で、今場所の調子から照ノ富士の圧勝が大方の予想だった。ところが、照ノ富士は落ち着いて宇良の動きを見るどころではなかった…。

 宇良は、立ち会いすぐに横綱の右腕を取って、土俵際まで追い詰めたのだ。照ノ富士が何とかしのぐと、次に宇良は肩すかし、出し投げと連続して攻め立てて横綱を追い詰める。この時点で場内はどよめきと歓声に包まれた。

 しかし体勢を立て直した照ノ富士はその後、慌てることなく対応。右下手でまわしをがっちり掴むと、最後は攻め手のなくなった宇良をじわりと寄り切った。

 32秒2という、この日幕内で最長となった熱戦に場内は拍手喝采。NHKで解説を務めた舞の海秀平氏が「すべて出し切りましたね。これは価値のある一番でした」と宇良の健闘を称え、すべてを出し切った宇良を最後の最後まで我慢して捕まえにいった照ノ富士の技術の高さを絶賛した。

 だが、ボルテージの上がったファンの最大級の感動は、実は熱戦の後に訪れるのだ。相撲記者が話す。

「VTRで両者が視線を交わしうなずき合ったシーンが映し出されたんです。これに涙腺が崩壊したというファンが続出しました。というのも、2人は互いに大ケガで序二段まで転落し、リハビリに耐えて再び幕内まで戻ってきたという点で共通項があります。最後に視線を交わしたシーンは、一度〝地獄を見た〟この2人でしかありえない場面だったという声が飛び交ったのです」

 照ノ富士は2015年7月場所に大関に昇進したが、左膝半月板の損傷で17年11月に大関から陥落すると、その後は糖尿病の悪化などあり、番付は序二段まで陥落してしまう。

 常に引退がささやかれる中、19年3月に復帰すると、翌20年1月に十両優勝。7月には幕内復帰と同時に優勝を飾り、21年5月に大関へと復帰する。同年9月場所に奇跡の横綱昇進を遂げ、以降は1人横綱として相撲界を支える存在となっているのだ。

 一方の宇良は、2015年の初土俵からトントン拍子で出世すると、翌16年5月場所では早くも十両昇進。17年3月場所には幕内に昇進し、一躍、人気力士となった。

 だが、17年9月場所で右膝前十字靱帯を損傷すると、さらに翌年には左膝半月板を損傷してしまう。18年9月に三段目で復帰するが、幕下復帰を果たした翌19年の1月に再び右膝前十字靱帯を断裂することになる。

 数場所の全休を経て、照ノ富士と同じように序二段まで転落した宇良だったが、19年11月に復帰すると、1年後には十両へ再昇進。そして、21年7月場所ではついに幕内へと返り咲いた。以降、土俵を沸かせ続けている。

 この日の一番を、九重親方(元大関千代大海)は「美しい相撲だった」と大絶賛している。まさに2人の血と汗と涙の結晶といえる一番を経て、照ノ富士がこのまま全勝優勝を達成するのか、千秋楽まで見守りたい。

(石見剣)

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