5月12日に両国国技館で迎えた大相撲夏場所初日は、横綱・大関陣が総崩れという大波乱のスタートとなった。
大関で最初に登場したカド番の霧島が豪ノ山に一気に押し出されると、続く貴景勝も平戸海に一方的に押し出された。今場所から祖父で第53代横綱の四股名を継承した琴櫻も大栄翔を止めることができず、これまた押し出し3連発を食らったのだ。
これが負の連鎖というものなのか、4人目の大関・豊昇龍も熱海富士の上手投げで敗戦。結びの一番では横綱・照ノ富士が新小結・大の里にもろ差しを許し、強引に小手投げにいったところを逆にすくい投げを食らって、土がついた。土俵には座布団が舞ったのである。
出場した5人以上の大関、横綱が全敗したのは、2006年の秋場所6日目以来のことで、
「初日に限れば、昭和以降で初めてです。豊昇龍以外の4人は10秒ももたない完敗といっていい内容で、これから立て直して優勝争いにもっていけるかどうか…」(相撲ライター)
横綱、大関だけでなく関脇の2人も黒星で、役力士で勝ったのは大の里ただひとり。初日を終えたばかりではあるが「優勝するのは大の里か」という声が聞こえてくる。相撲ライターが続ける。
「先場所は新入幕・尊富士との優勝争いに敗れましたが、大の里も新入幕から2場所目。千秋楽まで優勝争いに残ったのは立派でした。その尊富士は先場所のケガの影響で、初日から休場。全休なら十両転落が濃厚です。そんな中で横綱を初日で撃破となれば、大の里の賜杯に期待するのも当然でしょうね」(相撲ライター)
そんな大の里だが、場所前には不祥事が発覚。昨年9月に部屋の未成年力士と飲酒したとして、4月23日に相撲協会から厳重注意を受けたのだ。
それだけに、今場所には期するものはあるだろう。もし優勝すれば先場所の尊富士の「初土俵から所要10場所での優勝」を上回る、初土俵から7場所目の優勝というスピード記録になる。
尊富士が十両から復活した際には、令和の大相撲は一気に「大尊時代」の到来、ということになるのかもしれない。
(石見剣)