西前頭筆頭の熱海富士が好調だ。名古屋場所初日は豊昇龍と対戦すると、右四つとなって左上手をガッチリつかんだ。熱海富士は豊昇龍に右下手を取られ、足技で脅かされた。これをこらえて右下手をつかむと、がっぷり四つに。そして、じわじわと圧力を加え、寄り切った。どちらが大関か分からない相撲だった。相撲ライターが言う。
「場所前から照ノ富士を相手に、充実の稽古を重ねていました。尊富士、大の里の優勝、そして大の里は小結に昇進し、今場所の成績次第では大関に昇進するとさえ言われている。2人をリードしてきた熱海富士は相当、カッカしていたみたいです」
2日目の琴桜戦は、あと一歩だった。琴桜にもろ差しとなられたものの、逆襲してあとひと押しのところまでくる。だが琴桜は土俵伝いに回り込みながら左上手を取り、体を入れ替えて寄り切ったのだ。
「琴桜は体の柔らかさで星を拾ったようなものです」(前出・相撲ライター)
熱海富士はよく言えばおおらか。悪く言うと大雑把だ。夏場所千秋楽で格下の隆の勝と対戦したのに、立ち会いで当たり負けし、簡単に押し出されている。
「勝てば三役。協会から与えられたチャンスです。それなのに、簡単に負けてしまう。豊昇龍と熱戦を繰り広げる同じ力士の相撲とは思えません」(各界関係者)
今場所は大の里が初日から連敗し、尊富士は休場。熱海富士はこれからも大関、三役との対戦が続く。
「終盤、幕尻にいる実力者の朝乃山、若隆景とも対戦する。勝ち越しはもちろんですが、二桁勝つことで大関への道が見えてくる」(前出・相撲ライター)
決して大雑把な相撲は取れないのだ。
(蓮見茂)