夏休みが始まったばかりの7月22日、保守車両同士が衝突脱線した事故により、東海道新幹線は始発から終日運休する大混乱となった。作業員1人が首の骨を折る重傷を負ったほか、乗客25万人に影響が出た。そして、ただでさえ旅行や出張の予定を大きく狂わされた乗客の怒りに「燃料投下」したのが、JR東海のあまりにもお粗末な対応だった。
東京駅と新大阪駅の運行掲示板には「運休」ではなく「遅延」と表記。さらにJR東海の公式アカウント、東海道新幹線運行情報では、次のような紛らわしい告知をしていた。
〈【07/22,15:46現在】運転見合わせのお知らせ
豊橋駅~三河安城駅間で保守用車が別の保守用車に衝撃し脱線したため、運転を見合わせています。復旧作業は19時頃まで続く見込みです。運転再開見込み時刻は、決まり次第お知らせします〉
こう説明されれば、朝から運転再開を待っていた乗客は、20時過ぎには東海道新幹線が復旧するのだろう、と期待してしまう。ところが18時過ぎになって、JR東海は東海道新幹線の終日運休を発表した。
18時に終日運休を発表されても、例えば20時の羽田・福岡の最終便には間に合わない。もっと早く終日運休を告知していれば19時、20時、21時最終の羽田・伊丹便の予約に駆け込んだ乗客もいただろう。
当然ながら、SNSには〈JR東海が公式発表した「復旧作業は19時頃まで続く見込み」は何だったのか〉という怒りの投稿が相次いだ。
JR東海によると、この復旧作業とは「新幹線の復旧」ではなく、事故車両を引き上げる作業を指していたという。その後、線路の点検や補修作業が入るため、22日中の復旧は困難と弁明したのだ。そんな後付けの言い訳をする前に、15時の時点で終日運休を発表していれば、乗客はまだ予定を組み直すことができただろう。
さらに本サイトで再三、問題視してきたように、JR各社がみどりの窓口を次々に廃止したため、払い戻しの乗客が、数少ないみどりの窓口に殺到。実際に並んでいた乗客は、払い戻されるまで2時間以上かかったという。
JR東海が相変わらずの殿様商売で乗客に正しい情報を伝えなかったのに対し、奮闘していたのが「24時間テレビの募金着服」や「セクシー田中さん」作者転落死、ドジャース・大谷翔平の個人情報漏洩と問題山積の日本テレビ「鉄道部」だった。
これは日本テレビ内の鉄道好きによるアカウントで、テレビ業界屈指の鉄道ファンである藤田大介アナによる鉄道企画などが紹介されている。
10時40分の段階で日テレ鉄道部は「東京⇒名古屋・大阪」の代替ルートの手書きイラストをアップ。さらに鉄道部を代表して藤田アナが、酷暑の中で復旧作業を行う作業員を激励した。
JR広報のグダグダぶり、「乗客ワースト対応」が変わることはないのだろう。予測できない運休に備え、我々は夏休みの旅行プランに余裕を持たせた上で、迂回ルートをあらかじめ調べておいた方がいいのかもしれない。
(那須優子)