押し相撲の翔猿が、大相撲名古屋場所で気を吐いている。4日目は大関・貴景勝と対戦し、激しい突き合いを繰り広げたが、貴景勝は右の突きが抜けて態勢が崩れた。そして翔猿から送り投げを食らったのだ。
2人は埼玉栄高校の先輩後輩の間柄。カド番の大関を倒した翔猿は、そんなことは関係ないとばかりに「動きはいいです。明日からも頑張ります」と話した。相撲ライターが言う。
「押し相撲は調子の波が激しく、連勝していたと思ったら連敗したり、先が読みにくい。しかし翔猿に限っては、そうしたことは比較的少ないのです」
思い出すのが、令和5年の名古屋場所3日目。両者は立ち会い、ぶつかり合うと、照ノ富士は左手でまわしをつかんで寄り立てた。ところが、一枚まわしでそれが伸びてしまったのだ。照ノ富士が渾身の力で寄り立てるが、一枚まわしは伸びるばかり。まわしとして機能せず、次第に照ノ富士の体力は消耗。蹴返しで態勢を崩したり揺さぶりをかけたりしたが、最後は押し相撲の翔猿が逆に寄り切って照ノ富士を下したのだ。先の相撲ライターは、
「5日目で対戦した豪ノ山のように直線的な相撲をとる力士なら、展開は読みやすいですが、翔猿は何をするか分からないので、照ノ富士は一気にいけない。ここがおもしろく、勝負の分れ目です」
5連勝の照ノ富士は10回目の優勝に向けて、充実一途の前半戦を送っている。しかし、決して万全ではない。相撲部屋関係者が語る。
「ダメなら引退もやむなし。照ノ富士は腹をくくっているのが好結果につながっていますが、この状態が千秋楽まで続くかどうかは分かりません。ひょっとしたら、中盤の負けをきっかけに調子を崩すかもしれない」
横綱相撲で押し切るか、翔猿ら下位力士の快進撃で、またまた近ごろ「流行り」の下剋上となるか。
(蓮見茂)