パリ五輪で日本人金メダル第1号となった柔道48キロ級・角田夏実のメダル授与式に登場したのは、ルイ・ヴィトンの市松模様「ダミエ柄」のメダルトレーだった。
メダルトレーのほか、大会ボランティアのユニフォームもルイ・ヴィトン製、メダルはフランス高級宝飾ブランドのショーメ製と、やたらと「おフランス・ブランド」が鼻につ…目につく。
それもそのはずで、商業五輪を象徴するように、パリ五輪大会スポンサーはルイ・ヴィトンやティファニー、ブルガリ、ディオール、ジバンシー、ショーメの他に高級シャンパンのドン・ペリニヨンなど、70超のブランド企業を傘下に持つモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)だからだ。開会式に参列したVIPには、LVMHグループ名を冠するモエ・エ・シャンドンのシャンパンがふるまわれたという。
これに大困惑しているのが「企業名」「ブランド名」を言えない公共放送NHKだ。開会式の聖火リレーからして、ルイ・ヴィトンの工房に運ばれた聖火は「ダミエ柄」のトーチケースに入れられるという嫌らしい演出に、NHKの実況では伊藤慶太アナが「ケース」を連呼。
LVMHのベルナール・アルノーCEOは、世界の長者番付1位。多様性だ平等だ博愛だと綺麗ごとを並べながら、ひと握りの白人系フランス人投資家だけが世界中のカネをかき集める、フランス金満主義と商業五輪を象徴する「LVMH五輪」に抗い、意地でもルイ・ヴィトンと言わない伊藤アナに拍手喝采を送りたくなる。
ましてやダミエ柄と双璧をなすルイ・ヴィトンの代表柄アナグラムが、日本伝統の家紋のデザインからインスパイアされたのは有名な話。家紋や柔道など日本の伝統のお株を奪っては「我がもの」のように振る舞うフランスに、モヤモヤする五輪になるかと思いきや…。
フランス発祥競技のフェンシング、男子エペ個人では、完全アウェー状態の加納虹輝が金メダルを獲得。本家・柔道も角田に続いて、66キロ級の阿部一二三が金メダルを首にかけた。スケートボードでも14歳の吉沢恋が金、15歳の赤間凛音が銀メダルに輝いている。
東京五輪では寂しい無観客試合だった日本選手団だが、3年前の悔しさをバネに、LVMHブランドのメダルを大量に持ち帰る大会になってほしい。
(那須優子)