社会

出所ヤクザが明かす「中国監獄」の地獄絵図〈後編〉(3)南京事件の日に呼び出され…

 日本と中国は歴史認識をめぐってたびたび衝突してきた。中国では徹底した「反日教育」が行われているが、それは塀の中も同様だった。

 毎朝、雑居房のスピーカーから音楽が流れてきて、囚人は横に整列して中国の国歌と共産党歌を歌うルールでした。国籍は問わず、全員で歌わなければいけない。監視カメラで口を開けていないのがわかれば即懲罰。もちろん、口パクも許されません。見回りの刑務官がスーッと横にやって来て、声が出ていなかったら懲罰です。

 カルチャールームで鑑賞できる映画も「反日」を謳うものばかり。日本の軍人が農家の奥さんを強姦したり‥‥。現代映画を観ても悪者はたいていレクサスやベルファイアなどの日本車に乗っていました。

 南京事件が起きた12月13日は大規模な追悼集会が行われます。私は毎年、教育課に呼び出され、「南京大虐殺についてどう思うか?」などと詰問を受けたものです。

 拘禁生活に突入して9年半が過ぎた頃、中国湖北省の武漢で「謎の肺炎」が猛威を振るう。後に世界を震撼させるコロナウイルスだった。

 中国は正しい情報を公開せずに、テレビではこう喧伝していました。

「日本人が中国に謎のウイルスを持ち込んだ」

「日本人が大勢死んで株価が大暴落している」

 コロナの感染者が出ても、治療できる設備や薬もない。マスク不足はもっと深刻でした。そんな折、日本政府が救援物資で送った大量の不織布マスクが、東莞刑務所にも届いたんです。中国製のマスクは個別包装になっておらず、不衛生でゴム紐がすぐに切れる。その点、メイド・イン・ジャパンは違う。今まで話したこともない受刑者から「サンキュー」「謝々」と感謝されたものです。その時ばかかりは日本人としての誇りを取り戻した気がしました。

 マツダ氏は舎房の班長として、同房受刑者の昼寝のチェック、喫煙所の見回りなど、真面目に責務をこなし、「6カ月」「7カ月」と二度の減刑を受ける。懲役15年の満期を待たず、今年5月16日、ついに出所の日を迎えた。

 中国の刑務所では、最初に夏服と冬服が2着ずつ、その他に下着や靴下、サンダルなど衣類一式がもらえますが、支給はその1回きり。金がなくて服が買えない受刑者は10年、20年とボロボロの服を着続けなければいけない。私の服は同じ背格好のパキスタン人にすべてあげてきました。

 刑務所を出て強制送還となり、羽田便で帰国したその夜、組織の人間が横浜の中国人クラブに連れて行ってくれたんです。塀の中で覚えた中国語が通じるのか、不安でしたが、これがまったく問題ありませんでした。それどころか、その店のホステス、エイコ(日本名)を中国語で口説いてカノジョにすることができたんです。

 今回、このインタビューを受けたのは、どうしても会いたい人がいるから。別れた妻との間に、2人の息子がいます。ヒロマサとカツトシ。もう何十年も会っていませんが、この記事をきっかけに再会できたら、これ以上の喜びはないでしょう。新横浜のたまり場でよくつるんだ昔の不良仲間にも会いたいですね。

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