プロ野球はオールスターが終わり、後半戦が開幕した。各チーム、残り約50試合ほど。パ・リーグはソフトバンクが前半戦で10ゲーム差をつけており、他のチームは2、3位狙いに切り替えざるをえない。何があるかわからないのが野球やけど、今年のソフトバンクが急にガタガタになるとは思えない。柳田が故障で離脱しても層の厚さでカバーできている。独走の最大の立役者は5番打者の近藤健介。前半を終えての打率3割2分1厘は、パ・リーグでただ一人の3割打者で、打撃技術は飛び抜けたものがある。
近藤のすごさを改めて感じたのが、オールスターのホームランダービーだった。普段の試合とは違うホームラン狙いの豪快なスイングで、セ・パの長距離打者たちを退けて優勝。身長170センチあるかないかのずんぐりむっくりした体型で、ホームランを量産する姿は、僕と同い年の門田博光を思い出した。感心したのが、1試合目の牧秀悟との対戦では2分間の最終スイングで追いつき、準決勝の岡本和真との対戦でも最終スイングで追いつくと、1分間の延長戦でも最終スイングで上回った。その集中力ときたらただ者ではない。決勝では、チームメイトの山川穂高を延長戦の末、1本差で下した。
バットコントロールが抜群で、強く振ってもボールをしっかりコンタクトできるのがすごい。昨年は本塁打王と打点王の2冠に終わったが、今年は三冠王が現実味を帯びてくる。打率の方は、覆面パトカーが現れん限りは大丈夫。シーズン終盤で規定打席不足から突然ランクインする選手がおるから。それさえなければ、楽勝で逃げ切れる。そうなれば、前半戦を終えて1本差のホームラン争いにターゲットを切り替えられるんとちゃうかな。ホームランダービーで見せつけたように、ホームラン狙いの打撃もできる選手。ホームランが増えれば、打点は自然と増えてくるから。
シーズン後半のパは、西武以外の3チームの2、3位争いだけではなく、9人目の三冠王を狙う近藤の個人成績にも注目やね。
一方のセ・リーグは、最後まで優勝争いが楽しめそう。巨人が首位で折り返したが、2位の広島から4位の阪神まで差はわずかで、毎試合、順位が入れ替わるほど。最下位のヤクルトにしても巨人とは9.5ゲーム差で、パの1位と2位の差より小さい。真夏の戦いでは、投手陣がバテるから打線が強いチームが有利となる。そうなればヤクルトのチャンス。村上、サンタナ、オスナの中軸は強烈で脇役もしっかりしている。特にホームランの出やすい本拠地・神宮での戦いで白星が増えるはず。
打力でいえば、DeNAはヤクルトと双璧。今年はオースティンが元気なのが大きく、牧、佐野、宮﨑とレベルの高い選手がそろっている。また、巨人は丸や岡本という計算できる打者がいるが、心配なのは阪神と広島。前半戦は2チームとも投手陣が踏ん張ってきたけど、あまりにも打たなすぎる。投手陣が夏場でバテたら苦しくなる。特に投打に層の薄い広島はしんどくなるんとちゃうかな。
阪神は各選手が何か歯車がかみ合わないまま、ここまで来た感じ。日本一になった昨年から主力野手の全員が成績を落としている。昨年は佐藤輝明が後半戦に打線を引っ張った。やっぱり逆転優勝はテルのバットにかかってると思うで。
福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。