JR上野駅の地平ホーム「13番線」が、8月1日から生まれ変わった。「PLATFORM13」が開業し、これまでのイメージを一新。ホーム壁面に17面のプロジェクターを設置して、映像アート作品やコンテンツムービーを放送するおしゃれな空間に生まれ変わったのだ。第1弾の取り組みとして、映画「ブルーピリオド」とタイアップし、オリジナル映像を放送している。
上野駅は1883年に開業。古い駅舎は決してきれいでおしゃれとは言えないものだったが、2002年に「アトレ上野」が営業開始。2010年に「エキュート上野」がオープンすると、大きく変貌を遂げた。
しかし13番線を含む地平ホームは昔のままで、薄暗く沈んだ雰囲気だった。「PLATFORM13」によって、それも大きく変わりそうだ。
おしゃれに生まれ変わるのはいいことだが、今のままがいいという鉄道ファンもいる。鉄道ライターは以前の上野駅を、こう言って懐かしむ。
「上野駅は山手線が通っている駅とは思えないほどレトロな雰囲気で、『北の玄関口』としてのイメージを強く残していました。エキュート上野がある3階には『喜多そば』という昔ながらの立ち食いそば店があり、北へと向かう前に腹ごしらえすることができました。寒い日に食べる温かいそばは、本当においしかった。エキュート上野の開業時にお店がなくなってしまったのは、残念でなりません。13番線も変におしゃれにならず、薄暗くてホームに立っていると切ない気持ちになるような、昔のままでいてほしかったですね」
そんな13番線ホームはもうひとつの理由で、鉄道ファンの心に残っている。先の鉄道ライターが振り返る。
「13番線にはブルートレインの『北斗星』や『北陸』、夜間急行『能登』(写真)が発着していたので、よく撮影に行っていました。ホームの南側の端で、入線してくる列車を撮るのが定番です。その近くにトイレがあったのですが、ここは男性同士が知り合う場所として知られていました。小便器の間に異常なほど大きな仕切りがあって完全に隔離されていたのは、隣の男性のナニを覗き込む人がいたからでしょう。急いで用を足して、逃げるようにトイレを出たことを覚えています」
そんなトイレも、今はもうない。13番線の印象は今後、もっと変わっていくことだろう。
(海野久泰)