7月28日からロシアを訪れていた鈴木宗男参院議員が、8月1日に帰国した。鈴木氏は「プーチンの友人」「ロシアの友人」を自認し、ロシアによるウクライナ侵攻についても「原因を作ったのはゼレンスキー」「ウクライナ側にこそ非がある」などと、独特の主張を展開してきた人物だ。そのあまりにもロシア寄りの姿勢から、永田町では「プーチンのポチ(飼い犬)」と揶揄されている。
ウクライナ侵攻後、鈴木氏がロシアを訪問するのは昨年10月に続いて2度目だが、今回も滞在先のモスクワで、記者団に「喧嘩両成敗という言葉があるが、原因を作った方がもっと悪い」と語るなど、従来の主張を繰り返した。
どのような考えを持とうと鈴木氏の勝手だが、「遊びではない」「国益が一番」などと豪語した今回の訪露の成果を見ると、ロシア側にまんまとしてやられた、と言われても仕方がない体たらくなのである。
事実、北方領土4島の元島民による「墓参」の早期再開については、ロシア側から「1986年の日露合意は無効」と斬り捨てられている。
2022年9月、ロシアは日本の制裁に対する対抗措置として、北方4島のビザなし交流に関する合意を「無効」とする一方、墓参を認めた合意については「有効」としていた。それが鈴木氏の訪露によって「無効」とされてしまったのだから、大失態である。
歯舞群島の貝殻島周辺での「コンブ漁」と、北方4島周辺海域での「安全操業」の再開についてもしかり。鈴木氏は「ロシア側から『近く貝殻島灯台の修理が終わる』との説明を受けた」と成果を強調したが、コンブ漁の再開時期は不明のまま。安全操業の再開に至っては、ロシアから「日本の態度次第」とクギを刺されてしまった。
それでも訪露の意義や手柄を強調する鈴木氏に対しては、永田町から嘲笑を含んだ批判の声が数多く上がっている。自民党の有力議員は、次のように指摘するのだ。
「有効だった墓参が無効とされてしまった一件を含めて、鈴木氏はロシア側にいいように利用されてしまった格好だ。シッポを振って乗り込んでみたものの、エサはもらえず。これでは『国益を損じた』と批判されても仕方ないだろう」
自称「プーチンの友人」は、屈辱にまみれる「訪露ポチ外交」をいつまで続けるつもりなのか。
(石森巌)