汚物が浮かぶセーヌ川で泳いだ選手の嘔吐・入院騒ぎだけではなかった。今度はパリ五輪の「記者クラブ」での食中毒騒動である。
現地時間8月5日に行われたIOCの定例会見で、食中毒の実態は判明した。ひとりの記者がIOCに、
「各競技施設で提供している食料から、食中毒が多数発生していることについてどう考えているか」
と質したのだった。IOCの広報担当者は、こう答えている。
「食中毒を訴えたメディア関係者がいることは認識しているが、全数や場所などはいまだに把握していない」
複数の競技施設で、記者クラブに置かれた果物や軽食を食べた記者の間で集団食中毒が出ていることを認めたのだった。
せめて選手にはまともな食事を出してほしいと思うが、それも無理だった。競泳男子100メートル平泳ぎの銀メダリスト、イギリスのアダム・ピーティ選手は自国メディア「inews」に、選手村で食べた魚料理に「虫が入っていた」と訴えた。
それでも虫入りの魚料理を食べ続けなければならない、切実な理由があったという。選手村の食事はベジタリアン向けの肉なし、植物由来の材料が6割を占めたそうだ。
「東京(五輪)の食事は素晴らしかったし、リオも素晴らしかった。でもパリはタンパク質の選択肢が十分ではなく、長い行列ができ、30分も待たなければいけなかった。(主催者の)持続可能性という主張がアスリートたちに押し付けられているだけだ。私は肉が食べたいし、パフォーマンスを発揮するには肉が必要だ。家ではいつも肉を食べているのに、なぜ変えなければならないのか」
ピーディ選手はそう言って、不満を露わにした。選手のブーイングでようやく提供されるようになったチキンステーキも数が絶対的に少なく、ひと切れを選手たちが奪い合う惨状だったそうだ。
しかもパリ五輪は「使い捨てコップを使わない」「ペットボトル入りのドリンクは販売しない」「環境に配慮した大会にする」という方針のため、「前に使った選手の口紅や食べカスがついたままの、不潔な食器が並んでいる」という証言もある。
そんな衛生状態だからか、日本サッカー女子代表でもブラジル戦の殊勲者たるMF谷川萌々子、アメリカ戦で好守備を見せたDF古賀塔子ら主力メンバーが、発熱などの体調不良で戦線離脱を余儀なくされた。
美食の国どころか、肉ひと切れも満足に食べられないパリ五輪。間違いなく「史上最低の五輪」だ。
(那須優子)