全身の筋肉が硬直し、声も出なくなる難病スティッフパーソン症候群。パリ五輪の開会式に登場したのは、スティッフパーソン症候群で闘病中のセリーヌ・ディオンだった。
セリーヌは旧フランス植民地だったカナダのケベック州出身。母国語のフランス語で仏シャンソン界のレジェンド、エディット・ピアフの名曲「愛の賛歌」を、闘病中とは思えぬ圧倒的な声量と歌唱力で歌い上げた。
そして選手村でも夜な夜な「愛の賛歌」が…。
パリ五輪主催者が選手村の各選手の個室などに配布した男性用避妊具の数は、東京五輪で準備した16万枚の約2倍。女性用避妊具は2万枚、オーラル用1万枚も準備したという。参加選手数は1万4000人ほどを見込んでいるので、選手1人あたり26回分。さすが愛の国フランスだ。
ただし五輪史上最高の避妊具配布数は、2016年リオ五輪の45万枚。選手1人あたり40回分に軍配が上がる。
身体的接触を禁じられた東京五輪に続き、トコジラミ防止と環境配慮から、パリ五輪ではダンボール製ベッドが導入されたが、ラグビーのアイルランド代表選手が「2人乗っても大丈夫」と、イナバの物置のテレビCMの十八番を奪うダンボール製ベッドの耐久性テスト動画をSNSで拡散した。元日本代表アスリートが語る。
「4年間の苦しいトレーニングと努力の成果を発揮するため、自分の出場までは禁欲生活を送りますが、競技が終わればストイックな生活とプレッシャーから解き放たれた反動、五輪会場独特の高揚感から、性欲を抑えきれなくなるのもアスリートの宿命なんです。ある女性アスリートの部屋の前に『帰国前の思い出作り』待ちの男性アスリートの列ができていたことも…。張り切っているのは南米や中東、ヨーロッパの選手で、日本選手のほとんどは選手村でもストイックな生活を送っています」
一夜の情事で選手生命を絶たれることもある。「選手村」内外のご乱行でHIVやC型肝炎に感染したアスリートが、国内外に実在する。特に問題となったのが、1984年のロサンゼルス五輪だ。
この時点でアメリカ国内のHIV死者2300人、感染者数は5000人を超えていた。ロス五輪の水泳飛び込みで金メダルを獲得したアメリカ代表選手はのちに、同性愛とHIV感染をカミングアウトしている。初めて選手村で避妊具が配布されるようになったのはロス五輪の次、1988年のソウル五輪からだ。
とりわけ心配されるのが、未成年者の多いスケートボード女子選手なのだが、実情はどうか。アメリカ代表マライア・デュアンによると、「選手村では騒音がうるさいと怒られる」ため、ティーンエイジャーのスケボー選手たちは競技前の練習も含めて、選手村以外で過ごすことが多いと明かしている。彼女らが選手村で休む時はコーチが帯同して守られているというから、安心である。
(那須優子/医療ジャーナリスト)