「どうも、今日もご覧いただいてありがとうございます。ここで私事ですが、少し時間をいただきたと思います」
神妙な面持ちでそう切り出したのは、8月18日の「アッコにおまかせ!」(TBS系)での和田アキ子だった。
前週の放送で、パリ五輪女子陸上やり投げ金メダルの北口榛花選手が寝そべってカステラをモグモグしている映像を見て「トドみたい」と言い放ったことに対する謝罪である。その釈明は次のようなものだった。
「先週の放送で、陸上女子やり投げの北口榛花選手に対して、動物にたとえるという不適切な発言をしてしまいました。お詫びします。えー、私自身は彼女のことが大好きで、日本で活躍している時も、本当に応援しておりました。ただ、ドキュメンタリーで見たんですけども、彼女は日本で優勝した時も、もっと上を目指したいということでチェコに拠点を移して、言語もままならない中、買い物に行ったり、そして練習している姿を見て、頑張ってるなと感動しました。そして、なんか形になればいいな、頑張ってほしいな頑張ってほしいなと思ったら、念願の金メダルを獲られて、もう私、心から、本当に心から嬉しく思って、テレビを見て泣いたくらいです。それが先週、彼女の寝そべってる姿を見た時に『可愛い、わっ可愛い』と思った瞬間に出た言葉が、動物にたとえる言葉だったので…。えー、リスペクトが足らなかったと思っております。すみませんでした。えー、北口榛花選手ならびに関係者の皆様に、心からお詫びしたいと思います。申し訳ございませんでした」
芸能界のご意見番が時には唇を震わせ、目に涙を浮かべながら頭を下げたのだった。
正直言って、アッコがトドと言ったことに対して、そんなに目くじらを立てることか、と思っていた。これが仮にトドではなく「パンダみたい」だったらどうだったのか。パンダならここまで炎上しなかったのではないか、と。トドは駄目でパンダはOKというのもおかしな話だが…。
そんなことをガタガタ言うヤツこそルッキズムではないか、と。トドを可愛いと思っている人だっているだろうに。それこそ、トドに謝れ、だ。
北口選手はこのことについて「悲しいです」とか「不快な思いをした」とか「責任者出てこい!」とか発言したのを誰か聞いたのだろうか。世界で活躍する金メダリストが、極東の視聴率もそこそこの番組で何を言われようが気にも留めていないのでは、と思う。もっと言えば、トド発言に不愉快だ、とSNSで騒いでいる人たちの中に、この番組をリアルタイムで見ていた人がどれだけいるかって話だ。
ゴッド姐ちゃんと呼ばれ、芸能界のご意見番として長年、番組を引っ張ってきたアッコでさえも、こんなふうにぷるぷる震えながら謝罪しなくてはいけないのかと、見ていて怖くなった。さすがのアッコもネット批判には勝てなかったのか。
というか、「アッコにおまかせ!」とは言うものの、番組内での発言が問題になったことに対して、それが本当に失言かどうかなども検証せず、タレント1人に謝罪させればそれでOKというTBSもどうかと思う。
で、思い出したのが、2016年1月18日放送の「SMAP×SMAP」(フジテレビ系)。公開処刑と言われた、SMPAメンバーの謝罪だ。あの一件は芸能史に残る黒歴史だが、今回のアッコの謝罪もそれに匹敵するほどの公開処刑だった。
アッコにしてみれば「なんでアカンねん」と思いつつ、そういう時代だから、と説得されて詫びたのではないか、とも思う。その後、「今日のアッコにおまかせ!は~」などといつもの調子でやられても、こちらの気持ちはドンヨリしたままだ。
モノ言えば唇寒しテレビ界。ひとつ言えるのは、これでテレビがますます委縮し、面白くなくなるということ。こんなテレビに誰がした!
(堀江南)