日本の夏を代表する行事といえば、言わずと知れた「お盆」だ。あの世から死者の霊魂が帰ってくるとされるお盆には、現在も「迎え火」を焚いたり、「盆棚」を作ったりして祖先の霊魂を迎い入れる風習が、日本各地に残っている。
お盆に焚くこの「迎え火」は先祖に対する目印だけにとどまらず、他の霊魂たちも招き入れるとされる。そんな言い伝えが元になり、江戸時代には歌舞伎の演目として「涼み芝居」が登場。それが広まったことが、夏といえば怪談話という定説の始まりだったとされる。
さて、これを怪談と呼んでいいかどうか意見が分かれるところだが、1970年代末から80年代にかけて一世を風靡した「口裂け女」に対し、2000年代に東北地方などで目撃されたとしてちょっとしたブームになったのが、「八尺様」なる化け物だった。
「口裂け女」に比べるとその出没頻度は極めて低く、一説には数年に一度程度。振り向きざまに「私、綺麗?」とマスクをとって相手を驚かす「口裂け女」に対し、この「八尺様」に魅入られると、必ず取り殺されると言うのだから、実に恐ろしい。日本の妖怪に詳しい研究家が解説する。
「八尺様はその名の通り、身長が八尺(約2メートル40センチ)ある大女で、いつも白いワンピ―スを着て帽子をかぶり、男のような声で『ぽぽぽ』という不気味な笑い方をするとされています。ただ、目撃した人たちにより、その証言はまちまち。若い女性の姿だったとする人がいる一方、老婆のようだったという証言もあります。帽子ではなく頭に何か別のものを載せていたという目撃談もあり、実際のところは2メートルを超える大女であること以外は、謎が多い。東北地方でのみ目撃される理由は、地蔵に封印されていてその地区からは出られないから、という説があります。彼女がターゲットにするのは基本的に成人前の男性ですが、子供が対象になることもある。東北の一部地域では伝説の化け物として、現在も子供たちから恐れられているそうです」
狙われたら最後、確実に取り殺される。口裂け女よりもはるかに恐ろしい「八尺様」には、出くわさないに限る。
(ジョン・ドゥ)