── どうしてもクスリから離れられないんですか?
「とにかく働ければよかったんです。でも、客には評判がよくて、天職だと思ったほどでした。合法ドラッグにはサンプルがあって、僕はバンバン配るほうだったから。それに行政の薬事課の人が来て、成分を調査するために商品を買っていく姿を見ていたら、合法ではないけど黙認されているんだなと。やはり、嫌いじゃないから、自分でもサンプルを試したりして‥‥」
── またですか。合法ドラッグが規制逃れで、ハードになり、文字どおり“危険ドラッグ”であることは身をもってわかっていたのに?
「それで、昨年5月から2回目の入院をしたんです。同じ病院でしたけど、大麻や覚醒剤の疑似吸引を行いながら依存を克服する条件反射制御法という治療法が特徴でして、これが薬物をやめると決意した人間には非常に効果的なんです」
本当に高相氏は薬物依存から立ち直ったのか。
2回目の入院では、同じ病棟にASKAや作家の石丸元章氏ら著名人もいたという。その石丸氏が言う。
「閉鎖病棟の中ですから、ストレスもたまって、気持ちが曇ってくる。すると、おどけてみせる人もいるわけですよ。そんな中でも高相さんは、いちばんおもしろい人でしたね。だから、退院後にこういう取材に応えるべきだと思ったんですよ。もちろん、おもしろいだけじゃなくて、稀有な体験をされている方だし、何より薬物の誘惑と対峙するという覚悟ができていると感じたんです。世間に薬物使用を認知されているわけですから、誘惑は多いはずで、それは本当に大変なことなんですよ」
── その覚悟を決めさせたのは、やはりのりピーの存在なのか?
「今年の正月に会いました。といっても、子供が僕の母親とスキーに行くというんで、荷物を持ってきた時に偶然ですけどね。最初に出会った時に感じた彼女の透明感は今でも変わっていませんでした。でも、また夫婦になる気は毛頭、ありません。遠くから彼女の活動を応援できればいいぐらいの気持ちしかないです。それよりも大事にしたいのは子供との関係です。たまにしか会えないけど、友達にしか話せないようなことも、僕に話してくれるんですよ。ダメな父親なのに‥‥。正直に言えば、ドラッグの誘いは今でもありますが全て断っています。子供が3月に中学を卒業するんで、その時までには立派な父親になって卒業式に出席したい。そのために、実家を出て、新生活を始めることも決めました」
正月に酒井は「どうしたの、そのおなか?」と、高相氏のウエストを見て笑ったという。それは決して皮肉などではなく、ふくよかになった体形が健康的で、薬物依存から脱した証しと感じ取ったからに違いない。