あの8月27日と28日にかけての豪雨によって、全線運休になっているJR山田線(岩手県)の復旧には約2カ月かかる見込みであると、JR東日本盛岡支社が発表した。
山田線は山岸駅と区界駅の間で、土砂の流出と流入が23カ所で発生。レールが浮かんだ状態になったり、土砂でトンネルを通れなくなるなど、列車の運行が困難になっている。これを復旧するために、約2カ月を要するというのだ。その間はバスによる振替輸送を行う。なお、盛岡駅から上米内駅の間は、約2週間で運転再開する予定だ。
2カ月もの運休となると利用者には痛手だが、それでも安堵の声が上がる。鉄道ライターにその理由を聞くと、
「2カ月かかるといっても、復旧はするわけです。台風や大雨、地震で運行できなくなり、そのまま廃線になることは珍しくありません。青森の津軽線は2022年の大雨の影響で蟹田駅と三厩駅の間で運休になり、今年5月に復旧を断念。バスやタクシーへの転換が決まりました。山田線もそうなる可能性がありましたが、復旧するということでひと安心なのです」
とはいえ、予断を許さない状況は続く。山田線は存続に際して、いくつもの問題を抱えているからだ。まずは赤字状況で、
「100円の営業収入を得るのにいくらかかるかを示す『営業係数』は、森岡と上米内の間で1812円(2022年度)、上米内と宮古では5337円(2022年度)にものぼります。上米内と宮古間の5337円は、JR東日本の路線でワースト8位。JR東日本の本音としては、早く廃線にしたいでしょう」(前出・鉄道ライター)
さらに地元住民が、山田線をあまり必要としてないという事情もある。鉄道ライターがさらに続ける。
「盛岡と宮古の間は岩手県北バスが『106特急・急行バス』という高速バスを運行しており、地元住民は山田線よりこちらを利用しています。料金は山田線が片道1980円で、バスは片道1950円(4回回数券を購入した場合の1回分)と若干安い上に、1時間に1本のペースで出ていて、利便性が高い。一方の山田線は、盛岡発宮古行きが朝6時台に1本と、夕方5時台に1本の、計2本しかありません。上りはそれに19時台の1本が加わった計3本。これでは皆、バスを利用しますよ」
もし再び台風が襲えば、復旧の方針がくつがえる可能性も捨てきれない。JR山田線はいつまでも存続してほしいが…。
(海野久泰)