強い勢力を保ったまま非常にゆっくりとした速度で進み、九州をはじめ日本各地に被害をもたらした台風10号。台風から遠く離れた関東地方でも被害は甚大で、特に鉄道は大きな影響を受けた。
群馬県の上信電鉄は、南蛇井駅と下仁田駅の間で土砂崩れが発生。区間運休になっており、復旧の見込みは立っていない。
千葉県の小湊鐵道は落石の影響で、里見駅と上総中野駅の間で運転を見合わせた。これも運転再開の見込みは立っておらず、同区間は代行バスが運行されている。
多くの鉄道会社が台風やゲリラ豪雨に振り回されているが、とりわけ小湊鐵道は、運休になるほどの被害を何度もこうむっている。
昨年の台風13号では里見駅と上総中野駅の間で運休し、里見駅と月崎駅間は半月で復旧したが、それ以外は2カ月後になってようやく運転を再開。しかも週末に限っての運転と制限した。
2021年は7月の集中豪雨で光風台駅と上総牛久駅の間と、里見駅と上総中野駅の間で運休。全線復旧まで3カ月以上かかった。
2020年も台風14号で一部が運休。復旧したのは2カ月後だ。2019年は9月の台風15号と10月の大雨で、2度も全線で運休した。
こうして毎年のように、運休を繰り返しているのである。なぜ台風や豪雨の影響を受けやすいのかといえば、
「よく運休する里見駅と上総中野駅の間は、養老川に沿って里山の中を走っているため、土砂崩れや落石が多いのです」
鉄道ライターはそう指摘するが、これが新たな悲劇を生んでしまう。今回、里見駅と上総中野駅の間が運転取りやめになり、代行バスが走っているのだが、
「6月13日の大雨の影響で、県道81号線の上総久保駅のすぐ東にある地点で土砂崩れが起き、現在も不通になっています。そのため、代行バスは大きく迂回するルートを通らなければいけません。鉄道が運行できななくなって、バスで代行しようとしたら、以前の土砂崩れで迂回するハメになるなんて、小湊鐵道が不憫でなりません」(前出・鉄道ライター)
小湊鐵道は近年、レトロな車両と昭和を思わせる里山の景色で人気になっている。支援するためにもぜひ乗りに行ってほしい。
(海野久泰)