マツダスタジアムに悲鳴と怒号が響き渡った。
それは9月11日の広島×巨人21回戦、広島が2点リードで迎えた9回表の異変だった。守護神・栗林良吏がマウンドに上がると、スタンドの興奮はマックスに。ここまで防御率0.88の鉄壁のクローザーの登場に、広島ファンの誰もが勝利を信じて疑わなかった。
ところがこの日の栗林は、まるで別人だった。先頭の代打・中山礼都にストレートの四球を与えると、次の丸佳浩にも連続で四球。坂本勇人の左前打の後、吉川尚輝を2ストライクと追い込んだものの制球が安定せず、今度は押し出し死球。さらに岡本和真の左前打で同点に追い付かれると、モンテスには勝ち越しを許す2度目の押し出しとなる四球を与えてしまう。結局、栗林は一死も奪えずに、屈辱の降板。2安打4四死球で6失点と、散々な登板となった。
広島は続いてマウンドに上がった森浦大輔、大道温貴ともにピリッとせず、最終回になって巨人に一挙9点を献上する惨状に。首位決戦を悪夢の2連敗で、ゲーム差は一気に3へと広がったのである。
プロの試合で一度に9点も入るのはかなりのレアケースといえるが、実は広島の場合、なにも今回が初めてではない。2019年4月、マツダスタジアムでのヤクルト戦では、菊池涼介と松山竜平の失策が絡む中、満塁でバレンティンがライトへのタイムリーヒット、その後も雄平、西浦直亨、中村悠平のタイムリーが次々と飛び出し、歴史的な1回12失点。終わってみれば、15-3の大逆転負けだった。勝利を信じて疑わなかったファンから怒号が飛び交ったのは言うまでもない。
今回は「栗林の代え時を誤ったのではないか」という指摘があるが、むしろ9月の首位攻防戦の2点差の場面でブルペンに誰も待機していなかったのは、栗林の力を過信していたからではないか。急きょ登板した準備不足の森浦、大道を責めることはできない。
広島にとっては間違いなく今季ワーストの試合だったが、大量失点しても1敗は1敗だ。9月に入って2勝7敗と大きく負け越している広島だが、負の連鎖を断ち切ることができれば、まだまだ優勝の可能性は残されている。
(ケン高田)