MLBナショナルリーグでワイルドカードを争うカブスにとって、あまりに痛い負けだったのだろう。カウンセル監督のあまりない激高が物語っている。
日本時間の9月12日、大谷翔平を擁するタレント軍団、ドジャースとの3連戦を2連勝したカブスは、一気に3連勝を狙っていた。
5回まで7-7の乱打戦は、7回、8回にドジャースが点を加え、9回表のカブス攻撃時のスコアは、7―10とカブスがリードを許していた。しかし、この日に抑えでマウンドに上がったコペックが大乱調。鈴木誠也ら3人に立て続けに四球を与えて無死満塁となる。勝ちを確信していた場内の余裕のムードはいつの間にかどよめきに変わっていた。
ところが、無死満塁から犠牲フライでカブスが1点を返したあとに問題のプレーが起きた。打者ブッシュの2球目に2塁ランナーの鈴木が三盗を試みたのだ。しかし、タッチアウト。本塁打が出れば一気に逆転の場面をあっという間にクローズさせたのだ。
試合後に盗塁死の鈴木について、カウンセル監督は「正直言って許しがたい」とまで言い放っている。つまり、この時点で鈴木の独断スチールだったことが判明したわけだが、鈴木は謝罪しつつ、投手のモーションが一辺倒だったこと、3塁コーチからは「行ってもいい」という指示が出ていたことを明かした。しかし、メジャーに詳しい野球記者は厳しい顔だ。
「あの場面、走るなら100%成功させなければならない。失敗した瞬間、理由は何であれ懲罰ものでしょう。カブスは勝てばワイルドカード争いでブレーブスに3ゲーム差に接近できていた。残り16試合だけに、1つも星を落としたくない。しかも14日からは13連戦です。ドジャースをスイープして連戦を迎えるか、負けて迎えるか、これは雲泥の差。鈴木の盗塁死がなかったら勝てたとは言いませんが、投手は見るからにアップアップでしたし、2点差で慌てることはなかった。それはテレビを見ていたファンの大半が感じたことです」
この日は20号本塁打を放った鈴木だが、試合後には「アナタは大谷翔平じゃないのよ」と、その数段上を行く大谷に感化されすぎではないかと揶揄する声が大量に投稿されている。
「大谷は盗塁成功率が9割2分、鈴木はこれで6割6分です。確率は3分の2。それで2点差の9回に三盗はやはり無謀と言われるでしょうし、そもそも普段は走るのが仕事ではない。日本以上に選手個々の決め事を重要視するメジャーでは、このような身勝手な失敗は忌み嫌われます。この日の1敗がカブス終戦の原因になりかねない。高校野球のように負けたら終わりのトーナメントなら、鈴木がこのままレギュラーをはく奪されても仕方ないほどのボーンヘッドでしょう」(前出・野球記者)
まさか、大谷翔平の目前でこれ以上ない失態を晒し、存在価値の違いを見せつけられるとは、鈴木自身が予想していなかっただろう。
(高木莉子)