2025年の球春、ドジャース・大谷翔平の二刀流復活の地が「東京ドーム」に決まった。メジャーリーグ機構(MLB)は、来年3月19日と20日に東京ドームで開催予定のメジャー開幕戦が、ドジャース×カブスになったと発表したのだ。ドジャースの開幕戦は今季の韓国ソウルに続き、2年連続でアジア開催となる。
MLBの発表を受け、ドジャースは公式インスタグラムで〈2025年シーズンはMLB東京シリーズで開幕!〉として、東京ドームと大谷、山本由伸、カブス・今永昇太と鈴木誠也の4ショットをアップ。〈来年3月、東京ドームで皆さんにお会いできるのを楽しみにしています〉と日本のメジャーリーグファンに嬉しいメッセージを寄せている。
ドジャース×カブスの開幕戦については、情報が錯綜していた。今年3月、「USAトゥデー」紙が、MLBがドジャースとカブスに来季開幕戦について非公式に打診、通達したと報道。それに対し、日本プロ野球の榊原定征コミッショナーは「そうなったら素晴らしいけど、白紙だと思う」との見通しを述べていた。
コミッショナーの白紙発言から一転、ドジャースとカブスの夢の開幕戦カードが実現した理由は2つある。ドジャース球団オーナーの「思惑」と、2028年ロス五輪のロビー活動だ。
ドジャース公式インスタグラムには、来季開幕戦のスポンサーとして「Presented by GUGGENHEIM」とあり、ドジャースの球団オーナーである投資家グループ「グッゲンハイム」の主催試合であることが明かされた。
ロスの熱狂的なファンからは、2年連続アジアでの開幕戦に不満が出るかもしれないが、オーナーが自ら動けば誰も文句は言うまい。MLBもNPB(日本野球機構)も「巨額の放映権料」を手にすることができ、日本のみならず韓国、中国のアジア系企業のスポンサー収益で十分ペイできると踏んだ、投資家集団の英断だ。
さらに日本での来季開幕戦は、2028年「ロス五輪」野球種目のロビー活動にも有利に働く。
昨年のWBCで優勝を逃したメジャーリーグ機構は意外にも、ロス五輪で復活する野球競技への参加に消極的姿勢を見せている。2028年ロス五輪は7月14日から30日に開催予定で、リーグ戦のペナントレースと重なるため、同機構のロブ・マンフレッド・コミッショナーは過密日程を理由に、メジャーリーガーの五輪派遣は難しい、との見解を出していた。
MLBの思惑に対し、大谷は先日のオールスター戦前の記者会見で、
「出たい気持ちはもちろんある。五輪は特別。ふだん野球を見ない人たちも、見る機会が増える。野球界にも大事なこと。個人的にも出てみたいという気持ちはある」
ロス五輪に日本代表として出場する意思があることを、ハッキリと示していたのである。
この大谷の発言は重い。アメリカの「若者の野球離れ」は深刻で、全米のリトルリーグチーム数は1990年代の10分の1以下になった。中南米とアジア、ヨーロッパでの野球ファン人口を増やさないと、この先のメジャーリーグ発展はありえない。来季ドジャース開幕戦を東京ドームで開催するのには、ロス五輪野球競技をより多くの視聴者に見てもらうためのプロモーション活動でもあるのだ。
東京ドームでの開幕戦がアジアや南米で放映され、グッズが飛ぶように売れれば、その実績を引っさげて「ロス五輪野球競技へのメジャーリーガー参戦」のロビー活動の後押しにもなる。
大谷にとって第二の故郷となったロサンゼルスと野球に恩返しするため、二刀流の舞台は整った。
(那須優子)