物流業界を激震が襲った。JR貨物が「輪軸組立作業における不正行為の発生」を発表したのだ。貨物列車の車輪、及び大歯車の圧入作業時に、圧入力が基準値を超えていたにもかかわらず、基準値内のデータに差し替えて作業を終了させていたことが明らかになった。
不正の対象になったのは、貨車560両と機関車4両。その後、さらに67両が加わり、JR貨物は貨物列車248本の運行を一時、取りやめた。9月12日には運行が再開されたが、一部の荷物に輸送の遅れが発生している。
JR貨物の発表によると、不正は10年前から行われていた。明らかになったきっかけは、7月24日に山陽線新山口駅構内で発生した貨物列車の脱線事故だった。脱線した車両に、不正が行われた輪軸が搭載されていたのだ。
現時点では脱線の原因が不正にあるのかはわかっておらず、JR貨物は調査を行うというが、もしそうであれば、業界を揺るがす大問題へと発展する。
これらの不正を発表したのは9月10日。同日には、鉄道イベント開催の発表も行われた。そのイベントは10月6日、仙台貨物ターミナル駅にて開催される「鉄道フェスティバルin東北」。JR貨物だけでなく、JR東日本や三陸鉄道、由利高原鉄道など、東北地方の鉄道会社が参加する一大イベントだ。不正行為と同じ日に発表されるとは、なんとも間の悪い話である。鉄道ライターもこう言って悔やむのだ。
「鉄道イベントはコロナ禍前にはよく開催されていたのですが、コロナでできなくなり、今もあまり開かれていません。鉄道会社が無料のイベントではなく有料の撮影会を重視するようになったのも、開催されない原因です。『鉄道フェスティバルin東北』は久しぶりの大イベントなので、鉄道ファンの期待が高まっていたのですが、不正の発表で台無しになってしまいました」
不正行為の状況によっては、JR貨物のイベント参加取りやめも考えられる。また9月29日には、JR貨物が主催する「隅田川駅貨物フェスティバル2024」が行われる。こちらも開催されるのかはハッキリしない。JR貨物が自ら招いたこととはいえ、鉄道ファンが楽しみを奪われるのは残念なことだ。
(海野久泰)