寺や神社などの「宗教法人」による悪質な「税逃れ事案」があとを絶たない。
つい最近も東京都内にある有名神社の代表役員を務める宮司が、お守りの販売などで得た非課税の宗教法人収入の一部を、自身の生活費などに流用していたことが発覚した。
流用額は昨年までの7年間で約2億5000万円。東京国税局は流用分が宗教法人から宮司への給与に該当すると認定し、税務署に納付すべき源泉所得税(企業や団体などが従業員に給与を支払う際、給与から天引きして税務署に納付する所得税)を故意に逃れたとして、宗教法人と宮司に対し重加算税を含む約1億3000万円の追徴課税を命じたのだ。
法人税法では、宗教法人が行う事業のうち、駐車場や飲食店の経営などの34事業は収益事業として課税対象になると定められているが、お布施や賽銭などによる収入、お守りやおみくじなどの販売収入は非課税とされている。そしてこの非課税収入を「闇給与」などの手口で私的流用するケースが多発しているのだ。
事実、国税庁が昨年6月までの1年間を対象に実施した調査だけでも、全国に1975ある宗教法人のうち、約72%に上る1429法人で源泉徴収漏れが発覚。追徴課税額は合計で約15億円にも達しているのだ。
それだけではない。宗教法人法は宗教法人に対して毎年、収支計算書を都道府県などに提出することを義務づけている。ところが年間収入が8000万円以下で、かつ、収益事業を行っていない場合は収支計算書の提出義務がなく、これもまた税逃れの温床になっていると言われている。
ちなみに、この金額を個人事業主に当てはめてみれば、事態の異常さはより鮮明に浮かび上がってくる。年間8000万円近い事業収入があっても、全て非課税で流用し放題なのだから、これはもうウハウハの逃税天国である。
まさに「坊主丸儲け」の世界。その闇は限りなく深い。
(石森巌)