芸人仲間から「人の心を忘れた冷徹なモンスター」と呼ばれ、サイコパスを疑われる芸人がいる。東野幸治だ。
「家族で飼っていた亀の死骸をゴミ箱に捨てた」という噂があったり、離婚後、家に残されたタンスをあっさり捨て「家族の思い出が詰まったタンスをどうして捨てられるの?」と娘を泣かせたこともある。
千原ジュニアがバイク事故で入院した時のこと。東野はお見舞いに行った。歯を失い、顔面は崩壊、点滴で栄養を補っているジュニアに対し、グルメ漫画「美味しんぼ」を差し入れたのだ。しかも書店の本棚からごっそり大人買いした漫画の束は、抜けた卷があったり、重複していたりした。「なにしに行ったんだ!」とツッコミを入れたくなる。
ところがチュートリアルの福田充徳が急性膵炎で入院した際には、違った一面を見せた。
「(福田のところに)芸人1人ぐらいしか見舞いに来てないの。俺、もう涙を堪えるの必死やって。当時、今田耕司さん、雨上がり決死隊の4人で番組やってたから、そのオープニングで全員に説教しました」
東野は周囲の共感を誘う言葉を吐くのだった。
いったいどちらの東野がありのままの姿なのか。本人の見解として、以下のような心理が語られている。
「普通になりたいのよ。この話、してええんかな。精神科医がサイコパス的な犯罪者を検査するじゃないですか。で、『木を描いてください』って。若い時はちょっと尖ってるし、『俺は普通のやつと違うぞ』ってリンゴを面白おかしくとか。木、生い茂るはずが葉っぱないとか。そういうバリエーションに富むじゃないですか。でもホンマにヤバイやつは、汗をかきながら必死で普通の絵を描こうとするのよ。隠すのよ」
ということは、福田のお見舞いにまつわる芸人仲間への説教は、「普通の人間」を演出するためのものだったのかもしれない。
ちなみに東野は、ゴルフやブログを始めた理由についても「どうか俺のこと、普通の芸能人やと思ってくれ」という願いからだと明かしている。
(坂下ブーラン)
1969年生まれのテレビディレクター。東京都出身。専門学校卒業後、長寿バラエティー番組のADを経て、高視聴率ドキュメントバラエティーの演出を担当。そのほか深夜番組、BS番組の企画制作などなど。現在、某アイドルグループのYouTube動画を制作、視聴回数の爆発を目指して奮闘中。