今シーズンの低迷を表すようなタイミングの悪い電撃退団だった。
9月24日、サッカーJ1の川崎フロンターレは、FWバフェティンビ・ゴミスと両者合意で契約解除したことを発表した。
川崎に元フランス代表の大物ストライカーのゴミスが加入したのは、昨年8月のこと。
これまでリーグ・アン(フランス)のサンティエンヌでデビューすると、強靭なフィジカルとリーチの長さを生かしたポストプレー、こぼれ球の反応の早さでゴールを量産。同国の名門リヨンやマルセイユ、トルコのガラタサライでも相手DFを震撼させてきた。
18年には、サウジアラビアのアル・ヒラルに移籍すると、絶対的エースはアジアの頂点のクラブを決めるAFCチャンピオンズリーグ(ACL)制覇に2度貢献。そんなビッグネームの〝日本上陸〟は大きな話題となった。
Jリーグを取材するサッカーライターが解説する。
「来日時にはすでに38歳と大ベテランでしたが、川崎は悲願のACL優勝のためにアジアの戦い方を熟知したゴミスに白羽の矢を立てました。同じポジションには、大黒柱のFWレアンドロ・ダミアンがいましたが、22年シーズンから負傷離脱が多くなり、新エースとしての期待が大きかったのです」
23年シーズンの9月15日の第27節FC東京戦で初スタメンを飾り、Jリーグデビュー。その日はノーゴールに終わったが、攻撃に厚みとアクセントを加えて、今後の活躍に夢が膨らんだ。
だが、サポーターの期待が膨らむ中、出場したリーグ戦通算17試合でゴールを記録したのは今シーズンのJ1第13節コンサドーレ札幌でのハットトリックのみというオチだ。
四つん這いになってのっそりと歩く、得点後におなじみの〝ライオンパフォーマンス〟を披露したのは、実はその日が最初で最後となったわけだが…。
「フロントとしては、ゴールを奪う技術を若手FWに伝授してもらう狙いもありました。実際、練習中に見せるゴミスの豪快なボレーシュートやPKの技術は世界レベル。若手は技術を盗もうと、しっかりと学んでいたように映りました。実際、その効果は今シーズン花開き、プロ2年目のFW山田新が急成長を遂げ、12ゴールを奪って得点ランキング4位タイと覚醒。川崎はリーグ15位と大苦戦しており、残留に向けてゴミスのリーダーシップと経験が必要になると思われた矢先の退団だっただけに、サポーターの間では予想以上にがっかりムードが漂っています」(前出・サッカーライター)
フロントは円満退団を強調しているが、そもそも優勝を狙うチームにとって、大ベテランのストライカーは必要だったのか。チーム大不振の根本の原因はそこにあると言ったらサポーターに叱られるだろうか。
(風吹啓太)