これが最後のチャンス到来なのか――。
エールディヴィジ(オランダ)のフェイエノールトに所属する日本代表のFW上田綺世は、開幕から5試合すべてで先発落ちの窮地に立たされていた。
しかし、状況が変わったのは、9月22日に行われた第6節NACブレダ戦でのこと。
攻撃陣を牽引するメキシコ代表のFWサンティアゴ・ヒメネスが前半29分に太ももの筋肉を損傷。上田が交代で緊急出場すると、5分後にDFハイス・スマルのクロスを頭で合わせて、待望の今季初ゴールを挙げた。
その後、フェイエノールトはPKで追加点を奪い、2-0で勝利。チームは約1カ月ぶりに勝ち点3を獲得し、上田にとっては大きなアピールの場となった。
「試合後、負傷交代したヒメネスは全治3カ月の診断が下されました。昨シーズンのリーグ戦で23ゴールをマークしたエースの年内離脱は大きな痛手です。しかし、同じポジションの上田にとっては千載一遇のチャンスがやって来た」(スポーツ紙記者)
だが、ここでエースの座を奪えなければ、上田は再びベンチに舞い戻るだけでは済まない状況に追い込まれる可能性が高い。
上田は海外初挑戦の22-23シーズンにサークル・ブルッヘ(ベルギー)でリーグ戦22ゴールを記録。その活躍が認められて、オランダの名門フェイエノールトがクラブ史上最高額の移籍金1000万ユーロ(約15億円)で獲得したわけだが、新天地で待っていたのは厳しい現実だった。欧州に詳しいサッカーライターが、声を潜めるようにこう解説する。
「とんとん拍子でステップアップした上田でしたが、23-24シーズンはリーグ戦5ゴールと期待外れの結果に終わりました。加入からわずか4カ月で構想外の扱いを受けると、オランダのメディアは容赦なく『クラブのレベルに届いていない』『高価な買い物は最悪だった』などと批判を繰り返したんです」
今季こそ見返してやろう。そう気合を入れていた上田だったが、開幕前に「チームが新戦力のFWを獲得したため、余剰戦力の整理で放出候補に名前が挙がっていた」(前出・サッカーライター)と言われるほど、厳しい立ち位置からのスタートだった。
しかし、批判があろうと不屈のメンタルで日本代表でエースに定着したように、クラブでも土壇場の底力をフルに発揮し、ぜひともゴールラッシュで実力を見せつけての逆襲劇に期待したいところだ。
(風吹啓太)