岸田文雄首相は7月から全国行脚に出かけ、対話集会などを行う。得意の「『聞く力』を改めてアピールし、政権浮揚につなげたい考え」(共同通信の報道)なのだという。これに対し「岸田首相に決定的に欠落しているのは『当事者意識』」(法政大学大学院の白鳥浩教授)、「岸田首相に欠けているのは『発信力』」(政治ジャーナリスト・安積明子氏)などと、大ブーイングが起きている。
岸田首相は通常国会閉会後の6月21日の記者会見で、今年の夏に「政権発足の原点に立ち返って、全国津々浦々の現場におじゃまして、声を聞くことに注力する」と述べた。政権が掲げる「異次元の少子化対策」「賃上げ」などについて国民の意見を聞きたい、との意向だという。
中でも政権の目玉である少子化対策について、岸田首相は「2030年までが、少子化トレンドを反転させるラストチャンス」と繰り返している。
だが「未来の年表」(講談社)シリーズのベストセラー作家・河合雅司氏は「そもそも、少子化に対する認識が間違っている」(月刊「正論」8月号)と手厳しい。首相の意気込みとは裏腹に「出生数減の真の原因は、出産期(25~39歳)の女性の減少という構造的問題」と指摘しているのだ。河合氏は「甘い幻想を振りまくのではなく『出生数の減少を少しでも遅らせるため』と正直に国民に協力を呼び掛けるべきだろう」と注文をつける。
報道各社の世論調査によれば、岸田政権の支持率は軒並み、低下している。TBSが7月2日に発表した世論調査でも、支持率は6月の前回調査から6ポイント下落して40.7%。不支持率は8.1ポイント上昇し、56.4%だった。
過去の例を見ると、不支持率が60%台に達すれば、総選挙で大敗する。2009年と2012年、当時の麻生太郎政権、野田佳彦政権の不支持率は60%台に達し、自民党と民主党は総選挙で大敗、政権交代につながった。2000年の森喜朗政権も不支持率60%と低迷し、総選挙では40議席を近くも減らした。岸田首相はまさに、崖っぷちに立たされているのだ。