スポーツ

プロレス史に残る珍事…柔道金メダリストがプロレスのリングに上がって「払い腰」

 現役の男子柔道五輪金メダリストが、プロレスのリングでレスラーを投げ飛ばす。そんなプロレス史に残るハプニングを目撃した。

 2001年2月6日の後楽園ホール。人気団体FMWの興行に、バルセロナ五輪男子柔道78キロ級金メダリストの吉田秀彦(現・パーク24柔道部監督)がゲストとして招待されていた。

 全試合を終えた直後、人気レスラー黒田哲広らがリング上からゲスト席に座っていた吉田に向かって「上がってこいよ!」などと挑発。吉田はしばし躊躇していたが、スーツ姿でリングに上がった。

 すると黒田は「投げてみろ」などと、さらに挑発。吉田はちょっと困った顔をしたが、見事な払い腰で黒田を投げ飛ばした。これにはファンが大熱狂である。

 当時、吉田は明治大学柔道部監督であり、現役の選手でもあった。柔道連盟の選手がリング上でプロレスラーを投げ飛ばしたのは、かなり問題視される可能性があった。リングに上がっただけならまだしも、技をかけたとなると、興行に「参加した」とみなされても仕方がない。

 試合後、筆者が吉田に「これ、大丈夫なんですか。連盟に怒られないですか」と聞くと、吉田は表情をこわばらせて「確かにヤバイですね。記事にするのをやめることはできませんかね」と焦った口調で話した。

 とはいえ、他にも多くの記者が取材に来ており、すでに原稿を書き始めていた。残念ながら、記事を止めることはできなかった。

 おそらくリングに上がることまでは予定していただろうが、技をかけるのは想定外だったようだ。

 翌日、各スポーツ紙には吉田の払い腰の写真と記事が掲載された。その後、吉田は柔道連盟から厳重注意されたという。

 吉田は翌年8月、プロの総合格闘家としてデビューしており、将来を示唆するようなハプニングだったとも言える。

(升田幸一)

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