ダービー馬キズナと名手武豊の最強コンビが淀のターフに帰ってくる。昨年の天皇賞・春でまさかの4着敗退、レース後に骨折が判明した。戦線離脱してから9カ月半、今では大ケガの傷も癒え、馬体は貫録十分だ。レジェンド武豊の華麗な手綱さばきの下、充実期を迎えたキズナの復活劇が、いよいよ幕を開ける。
昨年5月4日に行われた天皇賞・春のレース中に左前脚の膝を骨折し、戦線を離脱していた13年のダービー馬キズナ。復帰戦は今週、京都競馬場で行われる1942年創設の伝統レース「京都記念」(GII、芝2200メートル)だ。
00年の覇者テイエムオペラオーは、ここから無キズの8連勝(GI5勝)を達成し、07年のアドマイヤムーンは国内外でGI3勝をあげ、ともに年度代表馬に輝いたものだった。
多くの名馬がステップレースに選ぶ舞台で、今年は桜花賞馬ハープスターとキズナが激突する。栗東のトラックマンが話す。
「キズナは昨年の12月12日に療養、調整を続けていた島根県の大山ヒルズから栗東トレセンに帰厩。すぐに調教が始まり、10本以上の時計を出し、順調に1月29日の2週前追い切りを迎えました。武豊騎手を背に素軽いフットワークを見せ、ラストは実にシャープな伸びでしたよ」
269日ぶりにキズナにまたがった武豊騎手も、その感触に満面のほほえみを浮かべて、取材陣を前にこう絶賛していたという。
「さすがですね。思っていた以上の仕上がりでした。相変わらず、すばらしいと思います。今週にでも使えそうなくらい」
キズナを管理する佐々木晶三調教師の声も弾んでいたという。前出のトラックマンが続ける。
「昨年暮れに厩舎に戻ってきた時にも、一回り大きくなった馬体を見て、『見た目にも迫力があるな』と目を細めていましたが、馬体重は春の天皇賞当時と比べて40キロ近く増えていて、530キロほどでした。この日も『5歳でもまだ成長しているよ。本当に珍しいね』と、驚きを見せながら愛馬の復活ぶりに安堵していましたね」
それもそのはず、事故当時は復帰を危ぶまれたほどの重傷だったという。栗東関係者が振り返る。
「当時、栗東トレセン内で左第3手根骨骨折の手術が行われたんだけど、かなり傷が深かったようで、『けっこうヤバイらしい』ってムードだった。その後、大山ヒルズに放牧に出され、順調に回復していると聞いて、ホッとしたものだったよ。佐々木先生も、去年の11月13日にキズナに会いに行って、坂路で調整している姿を見て安心したみたいだね。それで、つい親しい記者たちに『一歩間違えれば競走能力を喪失するくらいの個所だったからね。キズナの持つ運もあるのかな』と、大ピンチだったことを初めて明かしたんだろう」