最強コンビを組む武騎手もまた、愛馬キズナへの信頼は揺るぎなく、不死鳥復活に目を細める。スポーツ紙栗東担当記者が話す。
「キズナのベストパフォーマンスといえば、昨年の産経大阪杯だと思いますが、豊さんは勝っても1番人気じゃなかったことに不満顔でしたよ。『現役馬でいちばん強いのはキズナでしょう』って公言するほど、パートナーの秘めたポテンシャルの高さを確信し、信頼を寄せていましたからね」
キズナの単勝は2.4倍も2番人気で、1番人気は前年の菊花賞馬エピファネイアの1.9倍だった。しかし、レースではキズナが最後方の8番手から父ディープインパクト譲りの豪脚できっちりと差し切った。
「その最愛の相棒の離脱にかなりショックを受けていましたね。豊さんは昨年、中央GI未勝利に終わっているんですが、『キズナが元気ならなあ』という気持ちだったようで、『ポッカリと(心に)穴があいたみたいだった』と、心境を吐露してくれたこともありました」(栗東担当記者)
武豊騎手だけではなく、キズナもまた、大山ヒルズで寂しげな日々を送っていたという。
「元キズナの相棒だった佐藤哲三さんが引退記者会見の時に話していましたが、大山ヒルズの馬房では、キズナの隣に昨年のダービー馬ワンアンドオンリーがいた時期があるんです。注目される僚馬に嫉妬というか、すねるように寂しげにしていたみたいですね。その体験もあってか、今のキズナはやんちゃさも消えて落ち着き払っています。武豊騎手も今年は絶好調だけに、京都記念はいっそう楽しみです」(栗東トラックマン)
今年は開幕週に4勝をあげ、好ダッシュを決めた武豊騎手は、その翌週に行われたGIIIシンザン記念を制し、デビューした87年から29年連続で重賞制覇を成し遂げた。これまで岡部幸雄元騎手と並んでいた連続重賞勝利記録を年明け早々に塗り替え、歴代単独トップに躍り出たのだ。
「6年ぶりの年間100勝を『最低限』と話すほど、豊さんは気合い満点です。シンザン記念のグァンチャーレにしても志願の騎乗でした。前走の東京スポーツ杯2歳Sでは手応えよく直線を迎えたものの、前が壁になり、脚を余しての7着と消化不良の一戦でしたからね。今年の騎乗で感じるのは、きっちり馬をコントロールできている点です。冬場は腰の状態も悪いことが多く、抑えることができないケースもありましたが、今年はかなり体調がよさそう。心身ともに充実といった印象を受けます」(栗東担当記者)
東海S(GII)を制したコパノリッキーらお手馬もそろっており、中央GI勝利のハードルも軽々とクリアしてしまうかもしれない。