お笑いトリオ「ジャングルポケット」の斉藤慎二が、ロケバス内で20代の女性スタッフに性的暴行を加えたとして、不同意性交と不同意わいせつの容疑で書類送検された事件は、芸能界に大きな衝撃を与えた。いや、影響が及ぶのは、実は芸能界だけではなかったのだ。
斉藤は2013年から「ウイニング競馬」(テレビ東京系)のメインMCを担当する、競馬ファンとして知られる。と同時に、競走馬「オマタセシマシタ」を所有する馬主でもある。
同馬はトリオ名と同じジャングルポケットを父に持つ4歳牝馬。現在は公営・船橋競馬の川島正一厩舎の所属馬で、門別競馬でのデビューを皮切りに、金沢競馬や笠松競馬などを渡り歩き、24戦3勝(獲得賞金337万3000円)の成績を残してきた。ところが場合によっては、競走馬生命がジ・エンドになりかねない情勢なのである。
というのも、地方競馬全国協会の規定や競馬法施行規則では、所属競走馬のオーナーが禁固刑以上の刑に処せられた場合、馬主資格を剥奪する旨が定められているからだ。
不同意性交罪や不同意わいせつ罪で3年以上の懲役刑が言い渡された場合、執行猶予は与えられず、実刑が確定する。そして懲役刑は禁固刑以上に該当するため、斉藤が実刑判決を受けた場合、馬主資格は剥奪されることになる。
それだけではない。所属事務所の吉本興業は、今回の性的暴行事件を受け、斉藤に対してマネージメント契約の解除を通告した。
先に挙げた協会規定や施行規則では「調教師に競走馬を継続的に預託することが困難であると認められる者」も、馬主資格剥脱の対象になる旨が定められている。
吉本興業からの契約解除通告によって斉藤の収入が激減し、所有馬の預託料を支払うことができない苦境に陥れば、たとえ禁固刑に満たない形で事件が終結したとしても、馬主資格を剥奪されることになるのだ。
詰まるところ、馬主資格を剥奪され、かつ、カネもないとなれば、乗馬クラブが引き取るなどの僥倖がない限り、オマタセシマシタには「処分」の危機が迫ることになる。
言うまでもなく、競走馬に対する処分の実態は「殺処分」であり、その意味でも斉藤の罪は限りなく重いと言わざるをえない。
(日高次郎/競馬アナリスト)